開業と同時に税理士を顧問にした個人事業主
私が独立してすぐに、個人的にお世話になっていた方から相手も独立してすぐの個人事業主の方を紹介していただきました。独立してすぐで収入がどうなるかもわからない中、月額顧問料をちゃんと支払って税理士を雇うというのは顧問の私が言うのもなんですが結構リスクがあると思います。
周りの知り合いからも税理士を雇うなんてもったいないと思われているかもしれません。県の持続化緊急支援金の手続や、セーフティネット4号による借り入れなど顧問なので支援しますが、自力でやっている人もたくさんおり、「自分でやれば無料なのに」というのも一理あります。
顧客満足以外に興味が無い人々
給付金を獲得したり有利な条件の借入をしたりという作業が非常に苦手な人というのはいて、恐らく顧問先の社長さんも私がいなかったら自力では給付金をもらったりや借入れたりしなかったのではないかと思います。私の友人で10年以上個人事業主をやっていてコロナの直撃を受けている人も、確実に給付金をもらえると思いますが昨年の申告すらやっていません。このまま放っておくと結局もらわずに終わりそうなので手伝いたいところですが、税理士として手伝うということはその人の事業の儲けから財産からありとあらゆる金額情報を私に開示しなければならなくなります。そうなると関係が近すぎると躊躇します。本人も嫌なのではないかと思います。
ビジネスセンスがあるというのと、お客さんの満足度と何の関係もない何かを手続き通りにやるというのは全く別の才能です。顧問業務をやっているとそれを痛感します。ビジネスセンスがある人というのは、顧客が喜ぶことについては恐ろしいほど頭が回りますが、顧客の喜びと関係ないことについては恐ろしいほど興味がありません。そして、顧問税理士が必要な社長というのはまさにそういう人たちです。
富裕層は人にやってもらっているという事実
件の顧問先の社長さんは順調に業績を伸ばし、わずか1年で法人成りした方が有利な状況に持っていかれました。確かに、私がその間支援している申告業務や給付金や借入の申請手続、今後支援するであろう補助金や経営計画の作成支援といった部分はちょっと頑張れば私がいなくてもできる作業だと思います。
しかし、その時間を自分がワクワクする顧客満足を高めることに使い、売上を伸ばし利益を増加させたことが順調な業績を築いているのだと思います。「なんでも人に頼らず自分でやった方が余計な出費をせずに済む」というのは確かにその通りなのですが、出費を抑えるのには限界があるが売上を伸ばすのに限界は無いというのもまた真実です。
もし、なんでも人に頼らないで自分でやった方が得というのであれば、大企業ほど損をすることになります。大企業は各自が業務の一部に特化して互いに協力し合ってできています。社長は恐らくほとんどの現場作業を自分ではできません。また、多くの従業員を雇うよりも個人でやった方が儲かるという事になります。しかし実際には従業員をたくさん雇った社長さんの方が多額負債を抱えるリスクを抱える反面、儲けも大きくなります。
先日申告業務を依頼してきた個人事業主の方も、まったく税務のことやコロナの支援政策について等、何もご存じなく、知らないことでだいぶ損をしている人が潜在的にたくさんいるのではないかと感じました。昔に比べてインターネットなどで情報収集は容易になりましたが、そもそも興味が無いと調べないというのは今も昔も一緒です。
このように、「ちょっと調べれば」の「ちょっと」は人によって負荷が大幅に異なり、税務関係の話を何でも自分で調べるのが好きな人であれば顧問税理士は必要ないと思いますし、そういった話は自分で調べるのは苦手で興味もないというのであればその事業での獲得利益によりますが、税理士を雇っておいた方が結果的に得をする可能性が高いと思います。