セグメント分析、コスト分析…分かることは分けること?
決算数値を経営に役立てるために、より詳細に数字を分解していき何が増加要因なのか、減少要因なのかという原因を突き止めるというのは常套手段です。事業別に採算性を見たり、コスト詳細に分解してどのコストが増加しているのかというのを見たりします。
しかしそれだけでは、○○事業の採算性が悪くなった、コストのうち○○が増加したという事はわかるものの、なぜそうなったのかはわかりません。それはあくまで考えるきっかけに過ぎず、なぜそうなったのかというのはそこから自分の頭で考えなければなりません。決算の数値が教えてくれるのはあくまで結果こうなったという情報のみです。
決算数値がそうなった理由に気付くだけでは不十分
経営意思決定に役立てるという目的を達成するためには、決算数値を分析する→その結果になった理由を考えるという事で終わってしまってはいけません。「○○事業は想定外の突発事象が発生したため採算が悪化しました」「コストのうち○○が増加しているのは近年の石油価格の高騰のためです」といった形で、なぜそうなったのかというのは意外と考えれば説明がつくものですが、数字の分析から理由の追跡に時間とリソースを取られた結果、理由が分かった時点で終わってしまいがちです。
しかし、本当は「なぜ想定外の突発事象が生じたのか?もし今期も同じことが起こったらどういう打ち手を取るべきか、今回ほどダメージを負わないように予防策はないのか」「石油価格は今後も高騰する可能性があるが、コスト上昇に対応するにはどうすればいいのか」といったところを考えることに時間をかける必要があります。
分けるだけではなくつなぐ必要がある
分析によって、問題を発見しその理由が分かるだけでは解決まではたどり着けません。問題が起こった原因からさらに遡っていき、根本的な原因まで追跡したのち、根本的な原因を取り除くための方策を見つけて初めて意味があるものになります。根本的な原因にたどり着くには発生している望ましくない事象をつないでいく必要があります。大抵は望ましくない事象は他の望ましくない事象を引き起こしており、連鎖的に問題を引き起こしているため、根本的な部分を解決すると大部分の問題が消えるという事が起こりえます。
そして、根本的な部分では対立する考えがぶつかっているため解決不可能に見えることがよくあります。よく例に出しますが、国の財政問題が典型的な話です。国の財政問題は、政府の負債が増加しすぎてお金が使えないという問題が国全体で様々な問題を引き起こしています。
ここでは、「国家を健全に運営して、国民を幸せにしたい」という目的に対して、「将来にツケを回さないためにこれ以上借金を増やしてはいけない」という考えと、「国力を高めるためにもっとお金を使わなければいけない」という対立する考えがぶつかっているところが根本原因です。お金を使ってはいけない、しかしお金を使わなければ国は衰退するという解決不可能に思える難題を解決することができれば多くの問題が連鎖的に解決します。
目的に立ち戻る
「国家を健全に運営して、国民を幸せにしたい」という目的は共通で、それができない「お金がないからできない」という部分は「お金を使えば借金が増えてむしろ不幸になる」と、考えているためで「お金を使えば国民に仕事を与えて国力が高まる」という点は実は否定していません。
この対立のレベルにいるとわかりませんが、借金を問題ないレベルにするためには、「政府が借金して仕事を国民に与える→国民に仕事とその対価としてのお金が渡る→国民がお金を使い国全体のお金が増え始めインフレが起こる→1円の価値が下がる→借金が相対的に小さくなる」という流れにもっていくのが目的を達成するのに一番いいと考えます。
個人のレベルではお金の価値が下がるレベルまでお金を使うという事が想像もできませんが、国家レベルでは可能です。緩やかなインフレは国民の消費も促します。インフレはお金の価値が下がっていく現象なので、お金を早く使ってしまった方がより多くのものを手に入れられるからです。これがデフレだとお金の価値が上がっていくので、お金を使うタイミングを先伸ばせばそれだけ多くを手に入れられるようになるため、人はますますお金を使うのをためらうようになります。なのでインフレは景気を更に良くし税収を増やすことになります。
しかし、「借金を減らすためには借金をしなければならない」ということを個人レベルで考えると理解できないため、身動きが取れなくなってしまいます。
根本的な解決策を探ろうとするとこんな風ににわかに信じられない結論が現れたります。そしてまさに「にわかに信じられない」ことであるがゆえに解決されずに残ってしまっているのです。