独立開業を目指す公認会計士・税理士の方向けの記事

記帳代行は引き受けるべきか否か

税理士の成功事例のセミナーを受けて考えること

税理士の成功事例のセミナーを何件か聞いてみて感じたのは、税理士事務所は「記帳代行」をどうするかということに非常に悩んでいる事でした。記帳代行というのは、「会計のことはさっぱりわからんので丸投げでお願いします!」といわれて領収書の束を渡され、こちらで全ての仕訳を入力するというパターンの業務のことを言います。この業務は税理士からするといくつかの点から引き受けたくない一方で、顧客からのニーズは高く、引き受ける事務所は積極的に引き受け、引き受けない事務所は一切引き受けないという極端な別れ方をすることも度々あります。

記帳代行はまず、データ入力という単純作業の工数がかかります。データ入力は単純作業なため、この作業に対してあまり高い単価は設定できません。税務業務というのは工数×単価の仕事になりがちですので、この作業を自分でやろうとすると単価の部分が必然的に低くなり忙しい割に稼げないという状況に陥ることになります。

これが税理士が引き受けたくない最大の理由ですが、さらにデータの入力ミスのリスクがあります。顧客が入力するのであれば入力ミスも先方の責任ですが、こちらで入力ミスをしたらこちらの責任になります。

どちらにせよ税理士にチェックの責任はあると思いますが、ここでも自分で入力したものをチェックするのは当たり前で顧客に価値が見えにくいのに対し、顧客が入力したものをチェックし修正点を説明するとなると顧客から見ても価値を感じやすいという記帳代行のデメリットがあります。

しかも顧客はいつまでも会計について詳しくならず、せっかく作った決算書の有効活用にも支障が生じやすくなります。

記帳代行のアウトソーシング

しかし、最近では記帳代行のアウトソーシングのような業者がいくつかあるようです。単純な領収書のデータ化のところから、記帳代行業務全般を引き受けるところまで様々あるようで、そのアウトソーシング費用を顧問料にそのまま乗せることで、記帳代行を引き受けつつ、自分の時間を単純作業に使わずに業務を実施することは可能なのではないかと思うようになりました。

ただ、その場合でも自分でチェックする必要はあるでしょうし、顧客が会計に詳しくならないという問題は残ります。ゆくゆくは自計化という専門の経理担当者を抱えて事業を行っていく方向で税理士としては話を進めていかなければならないのではないかと思います。