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事業承継・M&Aの一次情報に触れている人から情報が上がらない理由

金融機関の支店担当者

事業承継やM&Aを検討している、検討しなければならない企業というのは現時点でも非常に多いでしょうし、これからも増えていくと思います。しかし、実際に必要である企業が多いと思われる割に、顕在化している数はそれほど多い印象がありません。件数としては数百件といったところですが、日本には400万社弱の企業・事業者がひしめいています。その0.1%でも4,000件です。

2016年のデータで社長交代率が約4%だったというデータがあり、400万社の4%で16万社。そのうち、事業承継によって社長が交代した会社が1割だったとしても1万社~2万社ぐらいの会社が事業承継です。おそらく、ちゃんとした事業承継やM&Aを検討した方が良い会社は顕在化しているものの100倍はあるのではないかと推測されます。

一次情報に接触している人たち

この会社は事業承継・M&Aが必要なのではないかと気が付くのは常日頃から社長に接している人です。思いつくのは、金融機関の融資を担当している方や、保険の営業担当者、税理士などです。

ところが、これがただの事業承継だったら問題ありませんが、売り手の会社として消滅する側だった場合、利害対立が生まれてしまいます。というのも、金融機関にとってはお金を貸し出す先が無くなり、保険の営業担当者にとっては保険の販売先が無くなり、税理士にとっては顧問先が無くなってしまうことを意味するからです。

このため、実際には承継してくれる対象者がいないなどで事業承継は難しく売却するのがベストの解決策だったとしても、なかなかそれを進めることができない状況に陥りがちなのではないかと思います。

また、仮に子供や第三者に事業承継をするケースであっても、社長個人との人間関係で契約が維持されている場合などは、社長交代を機に関係を刷新されてしまう可能性もあるので、変化すること自体がリスクと考えても不思議ではありません。

社長本人はわかっていても手放せない

社長本人はいずれ引き継がなければならないことが分かっていてもなかなか決断するのは難しいと思います。あまりに失うものが多すぎるからです。オンラインゲームであれば引退、社会的な影響力を手放すというのは悟りの境地だと思います。経営とは決してあきらめない心が必要であり、それはある一面から見れば執着心ともとれます。その気持ちがあるからこそ会社を存続成長させることができるのに、最後に承継を考える時はその気持ちが最大の障壁となります。

こう考えると、理想的な流れとしては社長が自発的に事業承継の診断を受けてみて今後の展開を考えてもらうのがいいのですが、本人がその気がなかった場合にはこの方法は難しくなります。そこで金融機関の担当者等に何らかのメリットがあることを認識してもらい、事業承継について考えるようにそれとなく促す方向にもっていくとともに、専門家へ依頼するというのが次に理想的な流れになります。