保険が目指した課税繰り延べ効果の完全版
保険料を支払うことで、その年には費用計上して利益と相殺し、任意のタイミングで別の年に解約返戻金を手に入れてそのタイミングで利益とすることを課税繰り延べ効果といいます。バレンタインショックと言われる税制改正によって難しくなってきました。
「節税になっていない!」と叩かれる課税繰り延べ効果ですが、10年間に一度も赤字にならない事業は1割程度のようなので、赤字になるタイミングで利益をぶつけて給与の支払に充てたり、資金繰りを維持したりと役に立てることは決して非現実的な話ではないようです。
この課税の繰り延べを狙って作られていた保険商品は本来の保険の目的から離れてしまっているため規制によって認められなくなってきていますが、完全な形で課税の繰り延べを行うことができるのが小規模企業共済という制度です。
小規模企業共済制度のメリット・デメリット
メリット①:全額課税所得から控除可能
小規模企業共済制度というのは、その年に払った金額を全額損金に算入することが可能です。事業所得の経費にはなりませんが、寄付金控除や医療費控除と同じ欄で小規模企業共済掛金控除という欄があり、そこで全額課税職から控除できます。どういう違いがあるのかわからない方もいるかもしれませんが、税制面では全額経費になったのと同じ効果です。
メリット②:受け取る時は退職所得か公的年金等の雑所得
にもかかわらず、この払ったお金は積み立てられ定期、最終的には受取ることができます。結局その時に利益になるから課税の繰り延べで節税になっていないという事にはなるのですが、受け取る時に非常に控除額が大きい退職所得(一括受取の場合)や公的年金等の雑所得(分割受取の場合)として受け取ることができます。
個人事業主であれば事業所得、法人であれば法人の利益として計算されてしまったはずのお金を未来に送りこみ、受け取る時には非常に優遇された税制で受け取れるという制度になります。
デメリット①:最大月7万円まで
余剰資金があれば最大限利用したい制度ですが、最大でも月額7万円、年間で84万円までしか認められません。この制度を利用して意味がある事業者は黒字でお金が余っている事業者なので事業のレベルで見た時に年間84万円というのはあまり大きな金額ではありません。
デメリット②:払ったお金は将来になるまで使えない
払ったお金はいずれ戻ってきますが、退職金と同じ扱いになるため再度受け取れるのはかなり先の話になります。ただし、掛け金の合計額の範囲内であれば事業資金の貸付けが受けられるため、お金がどうしても必要な状況では一時的に引き出すことは可能です。
小規模事業共済は従業員が20人以下など資格要件がありますが、一度は行ってしまえば事業の規模が大きくなっても継続可能です。まだ未加入の場合で、利益が十分に上がっている場合はまず検討すべき制度になります。