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サブスクリプション契約によって可能になったIT投資のトライアンドエラー

かつて社運を賭けていたIT投資

私が社会人になりての頃は、ERPという超大規模システム導入の全盛の時期で、システムが本格的にビジネスに利用され始めた時期でした。それまでも金融機関などシステム投資の資金が潤沢で、投資対効果が得られる分野では大規模なシステム投資が行われていました。しかしメインフレームという巨大なサーバーと何もできない端末という関係で、メインフレームを導入するのにとてつもない投資が必要だったため、一般企業は手が出せず、かつメインフレームではやりたいことに対してオーバースペックでした。そこから、それぞれがそれなりの処理を行うことができるクライアントサーバーが協力して処理していくという形に移行していくにつれて、投資コストが低減していき一般的な企業でも投資可能な水準まで下がってきた時代だったと思います。

それでも、業務フローの大部分をシステムがカバーするようなERPを導入できるのは大企業でなければ難しく、数億単位の投資を行い、導入に失敗すれば会社が傾く可能性もあるような一大プロジェクトとしてシステム投資がされていました。

慎重な意思決定が必要だったかつてのIT投資

だからこそ、投資には慎重にならざるを得ず、投資の前に「もしこんなことが起こったらどうするんだ」「こんなリスクがあるからやめた方がいいんじゃないか」「投資してから失敗したからやっぱりやめますじゃすまないんだぞ!」と喧々諤々の議論が交わされていました。そして、いざはじまると数百人単位のチームが編成されて後には引けない状況で頑張らざるを得ないため、「もうこれやめた方がいいんじゃないか…」と思ったとしても引き返す選択肢はありませんでした。

これは、IT投資に多額の初期投資が必要な購入型だったため、ある意味ITによって得られる恩恵に対して全額先払いをしているような状態でした。

サブスクリプション契約は費用と効果が対応しやすい

一方で、最近流行りのサブスクリプション契約(毎月一定額を支払い続ける契約)は、長く使っていたら購入型のソフトウェアより高額になっていきますが、簡単に引き返せるというメリットがあります。初期投資が少額で、試しに使ってみて思っていた効果が得られないと判断したらすぐにやめ、また再開したければそこから再開するということができます。再開までは費用は発生しません。

今回のZoomの脆弱性問題も、いったんテレワークで導入したものの、脆弱性が怖いなら即解約することができます。これが、例えばソフトウェアの耐用年数の60ヵ月分を一括で払ってしまっていたら「やっぱり使うのやめよう」とは簡単には言えないと思います。

これは、昔のソフトウェアが戸建の注文住宅のような企業の運用に合わせて高度にカスタマイズされていたのに比べて、現在のソフトウェアは賃貸マンションのようにこちらで内装(パラメータ設定)ぐらいは変更できますが、基本的な構造は変えられなくなったというのも大きな要因だと思います。

戸建の注文住宅も建ててしまったら「なんか思ってたのと違うな。引っ越そう」なんてことが簡単にはできませんが、賃貸マンションであれば戸建の注文住宅に比べたらはるかに簡単に引っ越すことができます。

購入型とサブスクリプション契約は真逆の発想が重要

したがって、現在のIT投資は事前にああでもないこうでもないと思い悩むよりも、まずは使ってみて思っていたのと違っていたらやめるというのを素早く行っていくべきです。その前提で投資を行うべきで、入れたら変えられないという意識を捨てて「まずは試用期間を設け、一定期間で判断する」というやり方で投資を行うのがうまくいくコツだと考えます。そうしないと、サブスプリクション契約は逆に無駄なコストを無期限に垂れ流す温床になりかねず、購入型と真逆の発想が重要になってきます。