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税理士とM&Aの関係

税理士がM&Aにかかわる理由

知り合いの会計士税理士の方と話をしていると、たまにM&Aの話になります。税理士がM&Aにかかわることはよくありますが、それにはいくつか理由があります。よくあるパターンは顧問先や知り合いから相談を受けて引き受けるというケースです。

税理士は、特に顧問税理士となって毎月会社と話をしている税理士は会社の数字をそれこそ1円単位で把握することができます。したがって、おおよその企業の価値もわかりますし、そういった仕事を専門でやっていることから、かかわっていない企業の価値も決算数値を入手することができれば評価できます。

M&Aは会社を不動産のように売買するという話なので、その会社がいくらが妥当なのかというのは避けては通れない話です。買う側の会社によって、売られている会社の価値は全く異なります。例えば、売られている会社の技術があれば売上が倍増するという会社にとっては少なくとも、現在の買い手企業の利益分ぐらいの価値がありますし、売られている会社を買っても相乗効果が見込めない会社にとっては、売られている会社が稼げる金額分ぐらいの価値しかなく、赤字の会社であれば、解体して売却するということでもなければ価値はほとんどありません。

そういった個別事情は当然踏まえた上で、「一般的にはこれぐらいの値段で買収できれば投資対効果が見込めます」という情報は参考情報として必須になります。その計算ができるのは、会計に明るい公認会計士や税理士です。

スモールM&Aに最適な公認会計士出身の税理士

大規模な上場会社同士のM&Aなどは、大手監査法人等のファイナンシャルアドバイザリー部門や大手M&Aコンサルティング会社の出番で、公認会計士や専門のコンサルタントの領域です。しかし比較的小さな企業(売買価格が数億円程度)の場合、そんな大手がかかわるには報酬が見合いません。

というのも、やらなければならない手続は会社の規模にかかわらず一定の労力が必要ですが、報酬は一般的にM&Aの規模に依存します。大手は大きな会社同士のM&Aでは億単位の報酬が発生するのに、小さな会社のM&Aではそこまで労力が変わらないのに数百万円程度の報酬しかもらえないとなるとやる気にならないと思います。

普段から小さな会社にかかわっており、1社あたりの顧問報酬が百万円を下回ることも一般的な税理士にとっては、その数百万円の報酬でも採算が取れます。そこで小さな会社のM&A(スモールM&A)では税理士の出番になります。

中でも公認会計士出身の税理士は、税務基準という小さな会社特有の決算書と、本来のあるべき会計基準の両方を理解しているため、スモールM&Aに最も適しています。税務基準は税収を確保する目的で作られているため「収益計上には寛容、費用計上は厳格」な基準です。収益計上は大きくなればなるほど回収できる税金が増えるためです。しかしM&Aを行う上で、この基準に則った決算書をそのまま適用すると本来の価値より高い評価が出てしまいます。

M&Aの時には本来の企業会計基準である「収益計上は厳格、費用計上は寛容(保守主義)」で評価しなければなりません。買い手の会社が買った後に思ったより得をしたのであれば文句は無いでしょうが、思ったより価値が低い会社を買ったと感じたら「だまされた!」と思うことになります。この企業会計基準は、税理士よりも公認会計士の領域です。

一般社団法人福岡事業承継・M&Aセンター

私は、一般社団法人福岡事業承継・M&Aセンターに所属しており、事業承継・M&Aのセミナー講師を担当しています。当センターでは、事業承継・M&Aの基本的な概論を学ぶアドバイザー養成講座と、事業承継・M&Aに必要な契約書やデューデリジェンスに必要なツール一式が提供され、実務的なワークが経験できるコンサルタント養成講座が定期的に開かれており、事業承継やM&Aを自分の仕事としたい人が多数受講されています。

どちらも決して安くはない受講料が必要ですが、入口になるアドバイザー養成講座はキャンセル待ちになるほど受講希望者が多数おり、事業承継やM&Aに対する関心の高さが伺えます。今後も経営者の高齢化や、今回のコロナ禍による業績悪化から売却を検討する会社が多数現れることが予想されています。