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業績は根拠なく伸ばせるのか

業績を上げろという指示で業績が上がる不思議

明確な勝算があるわけでは無く、とにかくがむしゃらに頑張って業績が伸びるということはよくあります。考えてみれば新規の税理士事務所も理屈から考えると勝算はありません。より実績のある税理士事務所がたくさんあり、顧客を新たに開拓するにあたっても圧倒的に不利です。低価格戦略をやるにも新しい事務所に価格競争力があるわけでもありません。それでも成功するところは成功しています。

10年以上堅実にビジネスをやっている友人もその成功要因を聞くと、それほど明確な勝因があるわけではありません。「周りがちゃんとしてないから」と、自分は普通にやっているだけで競争相手が普通にできていないからというような話になってしまいます。

トライアスロンをやっていても感じますが、我流でがむしゃらに頑張っていても ある程度の所までは行くことができます。毎日できる範囲で自分の時間はトレーニングを最優先にやっていましたが、結果的に比較的楽に上位30%以上に入ることができました。

トライアスロンはあまりタイムの話をしても理解できないと思いますが、フルマラソンの話で個人的な感覚ですが3時間半を切るところまでは我流でコツコツ頑張れれば到達可能な範囲、3時間を切るところまでは我流で必死に頑張ってギリギリなんとかなる範囲、そこから先(2時間55分→2時間50分→2時間45分…と5分単位での記録更新になってきます)はちゃんとしたランニング教室なり方法論を体得して厳しい訓練を積む必要がある人外の領域といった感覚です。

しかし多くの人は4時間を切るのもかなりハードルが高いと感じていると思います。それは、フルマラソンを「完走する」というのを目標に掲げており、完走するための練習をしている場合や、そこまでマラソンの優先順位が高くないため、別のことで忙しくてあまり練習に時間を割いていないといった人がほとんどだからだと思います。完走するための練習と3時間半を切るための練習では必要な練習量も練習内容も大きく変わってきます。

作戦が重要になるのは上位数%に入るあたりから

企業経営においても明確に戦略や他を圧倒する競争優位を生み出す策が重要になってくるのは、その業界でほんの一握りの上位数%に入るとか、圧倒的首位を目指すといった状況になった時になるのではないかと思います。逆に言えば、普通に頑張れば上位3割あたりのポジションに入るのは比較的現実的で、そういった戦略や作戦を持っているところが自然とさらに上位に食い込んでいくのではないでしょうか。

そうなってくると、自分が選択した業界において、上位何%までが「食える」のかが重要になってきます。上位30%ぐらいまでの会社が事業として成立する程度の利益を上げられる業界であれば普通に頑張れば大丈夫ということになりますし、上位1%の会社でなければ十分な利益が見込めない業界であればかなりちゃんとした戦略が無ければ戦い続けるのは難しいということになります。そして競争優位を生み出す戦略はいずれ真似されて優位を失っていきますので、新たな戦略を生み出し続ける必要があり想像以上に難しいと思います。

経営学にはコストリーダーシップ戦略や差別化戦略、誰も相手にしていないところで唯一の会社となるニッチ戦略等様々な戦略がありますが、それもカテゴリーとしてそういう戦略があるという話であって、実際には会社の数だけ異なる方法でやっているでしょうし、そうしなければ競争優位を生み出すことができません。このため、一握りの上位を維持できない可能性も考え、普通に頑張るだけでどの程度なのかというポジショニングの話は重要になってきます。

フルマラソンで3時間を切れたとして、その状況を維持するためにはトレーニングをずっと続ける必要があり、一般的な方法論としては確立しているものの各自で自分なりの工夫をし続けなければいけないというところと共通していてスポーツから学ぶことは多いと感じます。