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経理業務を俯瞰するには

経理業務を効率化するために必要な事

経理業務を効率化するとはどういう事でしょうか。業務が効率化したかどうかは2つの観点から判断できます。

①業務の量が減る、②業務のリードタイムが短くなるという2点です。幸いなことに、この二つはトレードオフの関係ではなく両立可能です。

①業務の量が減るためには

経理業務は大きく、①取引が発生する→②取引を記録する(売掛金台帳、現金出納帳等の作成)→③仕訳を会計システムに入力する(日常的な仕訳入力)→④決算書を作成する(決算整理仕訳を入力する)→⑤申告書を作成するという業務フローで行われています。

このそれぞれの作業の手間が減れば業務は効率化されたと言えます。極端な話、かつては手書きですべて行われていたわけですが、それがシステム化され手書きに比べてはるかに高速で記録・計算が可能になりました。これによって、「書く」「計算する」といった作業が大幅に軽減されたことから、会計システムによって経理業務は効率化されました。

長らく手書き→タイピングの効率化から進歩が無い時代がありました。タイピングをいかに効率化するかという事にシステム上の改善の焦点が当たり、できるだけ楽に効率的にタイピングができるようには進化していったと思いますが、それによる効率化の度合いはわずかで目を見張るものではありませんでした。

クラウド会計と言われる会計システムの出現により、インターネット上にある取引記録の情報(預金口座の明細やクレジットカードの明細等)を自動で収集する、もしくはデータを取り込むことで入力作業そのものを不要にすることに成功しました。こうして、タイピング→データ自動取り込みという効率化がなされ、手書き→タイピング以来の劇的な効率化がなされました。

しかし、現金出納帳などはいまだに手書き入力で管理しているところも多く、タイピングが必要な取引もあり、できるだけ手間をかけずに取引の記録から仕訳入力までを行う余地は依然としてあります。

②業務のリードタイムが短くなるためには

先ほどの取引の発生から申告までのフローのリードタイムが短くなればなるほど業務が効率化されたと言えます。しかし、まず取引の発生はコントロールが難しいですし、無理にゴールである申告に合わせると取引はできるだけ決算に近づけて遅らせるべきという事になってしまいそれはそれで不都合が生じます。

取引のタイミングは変えられないと仮定すると、ゴールの申告ができるだけ早期に終わればリードタイムは短くなったことになります。そう考えると、このフローにおいてのリードタイム短縮は2つのフェーズに分けられます。

第1フェーズは日常業務のリードタイム、すなわち前述の①取引の発生→③仕訳の入力(日常の仕訳入力)のリードタイム。第2フェーズは決算期における④決算整理仕訳入力による決算書の作成→⑤申告書の作成のリードタイムです。

また、①→③のリードタイムが多少伸びたとしても④→⑤のリードタイムを縮めるために必要であればやるべきという事もわかります。そうすることで①→⑤という全体のリードタイムが短縮されるからです。

この点についても、会計システムの出現により手書きに比べて劇的に決算書の作成が容易になり、決算整理仕訳→決算書作成のリードタイムが大場に短縮されました。ただ決算整理仕訳自体がシステム的な要因とは別に時間がかかる作業であるため、決算期のリードタイム自体は昔に比べてそれほど大きくは短縮されていないと思います。

また、申告書に決算書のデータを引き継げるようになったことで、転記のリードタイムも短縮されました。さらに電子申告で税務署まで提出に行く必要が無くなりさらにリードタイムを短縮できるようになりました。

日常業務の中では、理想は取引が発生した瞬間仕訳が入力されていることです。現在、預金口座やクレジットカード明細、電子マネーの取引記録などがシステムと同期化され、さらに自動仕訳登録を行うことで、現実的になってきた取引発生足仕訳入力ですが、現金取引等物理的に困難なものもあり、まだまだ改善の余地があります。決算の局面では、リードタイムを短縮する余地として決算整理仕訳はまだまだ改善の余地があります。いわゆる締め処理に時間がかかり、決算月の仕訳がなかなか完全に終わらずその結果決算業務にはまだまだ時間がかかっています。

全てを見える化するために

経理とはこうしてみると、決算書を作成するための元情報となる仕訳の記録が中心にあります。決算整理も仕訳です。仕訳には必ず勘定科目があります。そして、複式簿記のため必ず相手勘定もあります。

相手勘定という複式簿記の概念があるため、全ての勘定科目を網羅的にみると逆に重複してしまいます。例えば、売掛金の増加と売上の増加は表裏一体のもので、見るのはどちらかだけで大丈夫です。そしてどちらかと言えばモニタリングすべきはストック項目である売掛金の方になります。売上の減少取引はめったに生じませんが、売掛金は回収もあるため頻繁に増減し、来期に引き継がれます。

取引を起点に勘定科目の中で必要な科目について抽出し、今その取引に関係する勘定科目がかかわっている仕訳はどうやって入力されているのかを洗い出し、手入力の作業をいかに自動的に入力できるようにするかを考えるのが経理業務の効率化になります。自動入力は設定さえ間違えなければ手入力よりも正確です。これは時間短縮と共に仕訳の正確性にも影響を与えます。