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ITデューデリジェンスの実務

ITデューデリジェンスというジャンル

M&A(合併買収)において、デューデリジェンスというのは重要なステップになりますが、財務デューデリジェンス、事業デューデリジェンス、法務デューデリジェンスといった様々なデューデリジェンスがある中に、ITデューデリジェンスというものがあります。

企業を買収し、事業を統合しようと考えた時に、使っているシステムが異なると相乗効果は限定的になります。現在ではシステム無しにビジネスを行うことはかなり難しくなっています。特に企業を合併買収するような規模の企業ではシステムとビジネスは切っても切り離せないものになります。

同じビジネスを行っているのに違うシステムを使って事業を行おうとすると、システムに合わせて運用もバラバラにならざるを得ず、経営層に報告されるレポートの形式もバラバラになります。無理に合わせようとすれば、様々な手間がかかり、非常に非効率になります。

ITデューデリジェンスは一般的には行われない?

システムがあらゆるビジネスで利用されている現代で、ITデューデリジェンスは重要であると思われますが、2つの理由から実際にはあまり重要視されていないという印象です。

重要視されない理由① 金額的に小さい

デューデリジェンスは買収価格が適正かどうかを評価するために行うものです。企業の貸借対照表の資産の部にある資産価値を時価評価し、負債を時価評価したものを除くとその会社の価値が時価評価されます。このような考え方で企業価値を考えた時に、システムの価値は無形固定資産の部にあるソフトウェアの金額にしかなりません。大抵の場合、その金額は全体から見ると少額です。

ITデューデリジェンスで実際に考えなければならないのは、合併買収後にどれだけの金額的インパクトがあるかです。その金額は新システム導入プロジェクトにかかるシステム投資コスト、コンサルタントへの委託費用、プロジェクトチームの人件費といった様々な要素で構成され、無形固定資産のソフトウェアの金額とは比べ物にならないぐらい高額になる可能性があります。

しかし、時間が無い中でデューデリジェンスを行う場合、そこまで調査分析して推定値を算定する時間が無く表面的に見えるソフトウェアの金額を持ち出して「影響は軽微」と結論付けることが多いのだと思います。

重要視されない理由② ITに対する苦手意識

もう一つは、ITについてわかる人が少なく、ITデューデリジェンスをやれる人がいない、デューデリジェンスを依頼する側もITのことが理解できないため、デューディジェンスでの報告の意味が理解できない、といったITのことがよくわからないために無視されがちという事情があるのではないかと思います。

実は、ITに詳しいといっても、細かく見れば様々な分野に分かれています。アプリケーションに詳しいシステムエンジニア、ネットワークに詳しいネットワークエンジニア、データ分析の専門家であるデータアナリスト、ハードウェアに詳しいインフラ技術者、セキュリティに詳しいセキュリティスペシャリストなど多岐にわたり、デューデリジェンスを行うためにはそのすべてのジャンルについて網羅的に評価できなければなりません。そうなってくると、各分野の専門家でチームを構成する必要があり、デューデリジェンスにかかる時間もコストも膨大になります。

事業デューデリジェンスの一部としてのITデューデリジェンス

システムを考える時に、業務運用とは切っても切り離せず、それは事業のデューデリジェンスに密接にかかわっています。ITデューデリジェンスはそれ単体でやろうとすると非常に手間と時間がかかるものですが、事業デューデリジェンスのリスク分析の一つとして簡単にでも調査すべき項目になります。

できればIT統合に向けての方針までは決めているべきだと思います。買収企業に合わせるのか、現状維持するのか、統合するならいつまでにやるのか、一気に移行するのか段階的に移行するのかなどです。