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税理士の顧問業務を行っていて感じた記帳代行の弊害

税理士業務には、記帳代行という会計ソフトへの入力作業を代行するという業務があります。「会計・経理の事はさっぱりわからん!丸投げしたい!」というニーズに応えるためのサービスです。この記帳代行を得意とする税理士事務所もあり、良し悪しがあるとは思いますが、税理士という仕事をやっていて記帳代行にはいくつかの致命的な弊害があると感じます。

経理業務というのはそれ自体は比較的単純な作業ですが、その積み上げによって得られる会計情報は経営意思決定に影響を与える重要な情報となり得るものです。したがって、経営層はほぼ例外なく「もっと早く情報が欲しい」「もっと正確な情報が欲しい」「もっと役に立つ情報が欲しい(具体的にどういうアクションを取ればいいか知りたい)」と思っています。思っていますというか思っていないと経営しているとはいえません。

記帳代行が全くお勧めできない理由① 情報の反映へのタイムラグ

記帳代行を行うためには、会社から情報を受け取る→会計システムへ受け取った情報を入力する→会社に不明点を問い合わせる→会計システムの情報を修正・追加するといったステップが必要です。

記帳代行でなければ会社が会計システムへ情報を入力するというステップ一つで済むことを会社と税理士事務所との間でやり取りが発生することで時間がかかることは避けられません。税理士事務所はその会社専属で記帳代行をやっているわけではありませんから、情報を反映するのももらってすぐにとはいかない場合もあります。リードタイムはどんなに短くても1ヵ月後に情報が反映されるといった所ではないでしょうか。

「もっと早く情報を知りたい」という情報の適時性の観点からこの問題は致命的です。社内ですら会計情報の反映には時間かかかるものですが、記帳代行を依頼することで反映のリードタイムはどうしても縮められない壁にぶつかることになります。

記帳代行が全くお勧めできない理由② 情報の正確性

税理士がいくら会計の専門とはいえ、多岐に渡る会社の業務をすべて把握し、適切な仕訳を行うのは至難の業です。もちろん、致命的な誤りになることはほとんどないと思いますが、例えば会社が伝え忘れたら税理士事務所側は会計システムに入れようがありません。

また、税理士事務所は税務申告が正確にできれば何でもいいと思っています。したがって、計上すべき勘定科目が多少異なろうと税務申告に影響が無ければ特に問題視していません。さらに、発生主義に厳密に従う必要もなく最も誤解が無いキャッシュの動きに着目して仕訳を切ろうとするため、会計基準に従った会計処理を行わないことも往々にしてあります。「記帳代行を頼むような経営者はどうせ決算書なんてまともに見れないだろう。正確に作る意味は無い。それより税務申告を効率的にできるよう会計処理を行う方がメリットがある」という考えが背景にあります。

記帳代行が全くお勧めできない理由③ 決算書がいつまでも読めない

「決算書を読む」というのがどういうことなのか考えたことはあるでしょうか。決算書は「仕訳」という取引ごとの記録の集積です。そして仕訳の裏にはリアルな企業活動があります。

企業活動が起こった時に仕訳が切られ、決算書の勘定科目の金額が増加する・減少するという仕組みが分かっていないと、決算書を眺めてその裏にある企業活動をイメージするのは至難の業です。経営意思決定に決算書の数字を活かすには、なぜその金額になるのか、どういう企業活動の結果その数字が昨年より増えたのか、どういう企業活動の結果他社よりも伸びているのかといったことをイメージする必要があります。

この企業活動→取引→仕訳→決算書の流れはやってみると単純なのですが、一度もやったことが無く突然目の前に決算書が現れてもピンときません。決算書からその背景にある企業活動を想像できるかどうかは、この経理業務の一連の流れを実際の作業を通して体感しているかどうかに関係しています。記帳代行を依頼している会社はほぼ100%この経理業務を理解できておらず、なぜ理解しないといけないかが分からないがために記帳代行を頼んでいると言えます。

経理業務はよくわからないから丸投げしようというのが記帳代行の発想ですが、経理業務はよくわからないけど理解を深めようというのが自計化で、それが決算書の理解につながるということになります。

税理士が面倒な仕事を嫌がっているだけでは?

始めた当初は記帳代行のニーズがあるのであれば、受けてもいいのではないか、「税理士は記帳代行をやるべきではない」とよく聞くが、税理士が面倒なことをやりたくなくてそんなことを言っているだけではないかと思っていました。

しかし、税理士の仕事をやっていく中で、上記の理由から、なるほど記帳代行は会社にとって弊害の方が大きいと感じるようになりました。税理士としてもこの単純な作業に時間を取られてしまうと、より付加価値の高い節税の提案などに時間をかけられないという事情もあります。この結果、顧客満足度も下がってしまいLose-Loseの関係になってしまいます。


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