節税や税務について知りたい経営者の方向けの記事

インボイス制度-消費税を払いたくない!という人に厳しい制度

何とかして消費税から逃れようとした人の末路

法人税や所得税は収支がトントンでほぼゼロの会社でも、多額の消費税を納めなければならない会社は普通に存在します。消費税はもらったらちゃんと取っておかないと、払う際にその金額の大きさに払えずに困ることになります。

私も「消費税ってなんとかうまく払わずに済む方法はないんですか?」と聞かれたことがあります。理論上はありますが、それをやって税務署に見つかり罰金や重加算税を課せられた会社があります。

どういう風にしたのかというと、人材派遣の会社で請負代金(課税売上)を受け取り、派遣した社員には給料で支払っていたため、仕入による税額控除ができず、ほぼ丸々消費税を払わなければならなかった会社の話です。

その会社は、なんとか消費税を逃れようと、ダミーの会社を設立し、その会社に派遣の仕事を外注するという手を使いました。会社は設立から少なくとも2年は消費税が免税されます。このため、外注費を売上として受け取ったダミー会社は消費税を受け取っても納める必要がありません。一方で、発注した元の会社の方は給料が課税仕入に変わり、消費税を相殺できるようになります。

こうして、2年ごとにダミー会社を作りつづけ、消費税から逃れ続けたあげく、最後は国税に入られ、多額の消費税・重加算税を課せられることになってしまいました。

しかし、このように新設の会社がしばらく消費税がかからないというのは恐らくいろんなところで利用されているのではないかと思います。

インボイス制度がこのスキームを無効にする

インボイス制度が導入されると、この課税売上の消費税と課税仕入の消費税を相殺するというときに、免税事業者に支払った消費税は相殺してはいけなくなります。こうなってくると、先ほどのダミー会社の作戦は使えません。

また、免税事業者が丸儲けしていた受取消費税も相手が課税仕入による消費税の相殺を当てにしている取引先であった場合は最悪取引先を変えられてしまうことになり、今までのようにはいかなくなります。現実的には、免税事業者は自ら届出て課税事業者になるか、消費税抜きの金額で受注することで、相手先が消費税を支払う分をこちらが負担するような条件にする必要が出てきます。

このようにインボイス制度によって、法の歪みを利用して得をしていた人たちにとっては厳しい制度になっています。裏を返せば真っ当にやっている人には制度的な影響は特にありません。ただし、適格請求書保存方式の導入によって、新たに要件を満たした請求書を作成する必要に迫られ、IT投資等のコスト負担は増大すると思われます。

また、免税事業者の中でも仕入税額控除が無い最終消費者を相手に商売をしている小規模な事業者は特に問題なく免税事業者のままでいられます。昔、近所の駄菓子屋のおじさんが消費税が初めて導入された頃、「子供から消費税は取れない」と税抜き価格で販売していましたが、仕入の時の消費税は払っていたはずなので、その分丸損になっていたのだと思います。これをちゃんと消費税を取っていれば、仕入との差額で逆に儲けが増えていたはずです。

この駄菓子屋のおじさんの店はいまだにありますが、恐らく今でも免税事業者で今後も相手が子供なのでインボイスを発行しなくとも特に問題ありません。今は消費税をちゃんと取っているのかわかりませんが、当時子供だった私は親になり、間接的に私がお金を払っているのでちゃんと消費税を取って末永く続いて欲しいと思います。