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ワインの小売業者さんが自分でワインを飲んだら

今日も当番でスタートアップカフェの無料相談に行ってきました。今回は自家消費という、自分の事業の商品を自分で消費した場合の話が出てきました。当たり前の話ですが、商品の仕入値というのは利益が出るように、販売価格より安くなります。ワイン屋さんが販売価格より安い仕入値で仕入れたワインを自分で飲んだら、どういった会計処理を行えばいいでしょうか。

「別に売ったわけじゃないし、飲んでしまった分棚卸資産を減らせばいいのでは?」と思います。しかし、そうすると棚卸資産が減った分は売上原価という費用に変わります。売上が上がらず、費用だけが上がるという事は、最終的な利益が減り、支払う税金も減ります。

そこで国税が「いやいやちょっと待て、自分で飲んだってことは自分に『売った』ってことでしょ。収益もちゃんと認識して」というのが所得税法第39条です。

(たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入)
第三十九条 居住者がたな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)を家事のために消費した場合又は山林を伐採して家事のために消費した場合には、その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額はその者のその消費した日の属する年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する

所得税法

「資産の価額に相当する金額」というのは販売価格ということです。しかし、自分で飲んだワインの金額を実際に販売価格で買ったことにしたとすると、お金が入ってきていないのに払う税金が上がってしまい、ちょっとやりすぎな気がします。

そこで基本通達という、より具体的な取り決めで以下のように決められています。

(家事消費又は贈与等をした棚卸資産の価額)
39-1 法第39条又は第40条《たな卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入》に規定する消費又は贈与、遺贈若しくは譲渡の時における資産の価額に相当する金額は、その消費等をした資産がその消費等をした者の販売用の資産であるときは、当該消費等の時におけるその者の通常他に販売する価額により、その他の資産であるときは、当該消費等の時における通常売買される価額による。

所得税基本通達

まず39-1では、先ほど説明した「資産の価額に相当する金額=販売価格」という解釈が明文化されています。問題は次の項目です。

(家事消費等の総収入金額算入の特例)
39-2 事業を営む者が法第39条若しくは第40条に規定する棚卸資産を自己の家事のために消費した場合又は同条第1項第1号に規定する贈与若しくは遺贈をした場合において、当該棚卸資産の取得価額以上の金額をもってその備え付ける帳簿に所定の記載を行い、これを事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しているときは、当該算入している金額が、39-1に定める価額に比し著しく低額(おおむね70%未満でない限り、39-1にかかわらず、これを認める。

所得税基本通達

ちょっとわかりにくいですが、「39-1に定める価額」というのは先ほど紹介した販売価格のことです。「取得価額」というのは、仕入金額のことです。要約すると、「仕入れ値と同額以上の金額を売上に計上している場合は、それが販売価格の70%未満じゃなければ39-1に従ってなくてもいい」という事になります。

仕入れ値と同額の売上が計上されている場合は、利益はプラマイゼロになり、少なくとも本来支払う税金を減額することはありません。自家消費すればするほど節税になってしまうというのを国税は警戒しているわけですが、販売価格を売上にあげて利益分税金を払わせるのはさすがに酷だという事で、最低でも利益プラマイゼロにはしてよねと39-2で緩和してくれています。

ただ、その仕入れ値で計上というのも、販売価格の70%より仕入れ値が低かったらダメですよ、と言っています。つまり、自家消費した場合も販売価格の70%以上は必ず売上として計上してくださいと言っています。これは原則は販売価格でやってもらいたいというのが本音だから、緩和にも限度があるという事だと思います。

結果として、原価率が80%であれば、仕入れ値が販売価格の70%を超えているので、仕入れ値で、原価率が50%であれば、仕入れ値が販売価格の70%を下回るので、販売価格の70%を売上に計上しておくという事になります。

消費税法上はまた別の扱いであることに注意

この話は消費税が絡んできてややこしくなります。消費税は課税売上で受け取った消費税から課税仕入で支払った消費税を引いた金額を納税するというのが基本的な考え方です。

具体的な金額を出して自家消費のケースを考えてみます。

消費税抜きで販売価格10,000円、仕入価格5,000円のワインを自分で飲んだとします。

仕入の時には消費税500円を支払いました。しかし、自分で飲んでしまったので売ったのであればもらえていたはずの消費税1,000円はもらえていません。だから消費税納税の時は500円引いて納めてもいいのか?というと、これも所得税の時と同じで、それを認めてしまうと自家消費すればするほど納める消費税を節税できてしまうためダメです。

しかし、もらってもない消費税をもらった体で全額納めさせるのも酷だという事で、所得税と同様にプラマイゼロにしてという基本通達があります。

(自家消費等における対価)
10-1-18 個人事業者が法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する家事消費を行った場合又は法人が同項第2号《役員に対するみなし譲渡》に規定する贈与を行った場合(棚卸資産について家事消費又は贈与を行った場合に限る。)において、次の(1)及び(2)に掲げる金額以上の金額を法第28条第3項《みなし譲渡に係る対価の額》に規定する対価の額として法第45条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》に規定する確定申告書を提出したときは、これを認める。(平27課消1-17により改正)

(1) 当該棚卸資産の課税仕入れの金額
(2) 通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額

消費税基本通達

言っていることは所得税と同じで、仕入金額と同額を課税売上として計上するのを認めるという話と、ただし仕入金額を上回るとしても販売価格の50%程度は課税売上として計上することという事です。

所得税の時は70%がラインだったのに消費税では50%がラインになっています。つまり、消費税の方が所得税よりもプラマイゼロにしていい要件が緩くなっています。別に消費税を70%ラインで申告しても違法ではありませんが、消費税を余計に払わなければならなくなります。

消費税の課税事業者となり、消費税の確定申告が必要になった場合には注意が必要です。


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