税率の変化だけではない法人化による税務メリット
一般的には年間1,000万円の利益が出るぐらいから個人事業主よりも、法人成りした方が支払う税金が安くなると言われています。これは、所得税率が900万円を超えるあたりから跳ね上がり、法人税率を超えてくるためだと思われます。
しかし、実際には役員報酬として支払われる給与所得に対する給与所得控除の最低55万円や、利益800万円までは法人税率15%など、法人化することによって所得税よりも有利になる制度が複雑に絡んでいることから、もっと低い利益のうちから法人化することによるメリットはあると思われます。
そこで、法人税と所得税をざっくり比較するツールを作成していったいどこで個人事業主と法人の可処分所得が逆転するのかを調べてみました。
売上 | 6,480,000 |
給与以外の経費 | 1,200,000 |
法定福利費の会社負担分 | 515,160 |
給与(役員報酬) | 3,600,000 |
利益 | 1,164,840 |
法人税 | 174,726 |
法人地方税 | 17,997 |
法人住民税 | 86,026 |
法人事業税 | 40,769 |
法人税等計 | 319,519 |
法人のみ実効税率 | 27.4% |
年齢 | 21 |
役員報酬 | 3,600,000 |
給与所得控除 | 1,160,000 |
給与所得 | 2,440,000 |
社会保険料 | 185,760 |
厚生年金 | 329,400 |
基礎控除 | 480,000 |
その他控除 | |
扶養控除 | |
課税所得金額 | 1,444,840 |
所得税 | 72,242 |
住民税 | 144,484 |
可処分所得 | 2,868,114 |
総実効税率 | 29.7% |
負担額 | 1,051,405 |
総可処分所得 | 3,713,435 |
個人事業との差額 | 3,541 |
役員報酬の額によってまた変わってきてしまうのですが、額面30万円、手取25万円程度を最低ラインとして、設定してみました。そうすると、個人事業主として所得税が課せられた時の金額とほぼ同額の可処分所得になるのが、上の表にあるように、648万円で経費120万円だった場合の差引528万円程度の利益が出た時ということが分かりました。
個人事業主で同額利益が出た時のシミュレーションがこちら。
売上 | 6,480,000 |
給与以外の経費 | 1,200,000 |
利益 | 5,280,000 |
年齢 | 21 |
個人事業利益 | 5,280,000 |
国民健康保険料 | 598,100 |
国民年金 | 198,480 |
基礎控除 | 480,000 |
その他控除 | |
扶養控除 | |
課税所得金額 | 4,003,420 |
所得税 | 373,184 |
住民税 | 400,342 |
可処分所得 | 3,709,894 |
実効税率 | 29.7% |
負担額 | 1,570,106 |
40歳超えると介護保険料が絡んできますが、大体の目安としては使えると思います。そう考えると、大体利益1,000万円というのはかなり保守的に見積もられた金額ということが分かります。確かに、そこまで利益があれば確実に法人成りが有利だと思います。法人成りすることで個人では発生しなかったコストも多く発生することになるので、500万円ちょっとのすれすれのラインで法人成りしてしまうと、給与計算の委託など、個人の時は必要が無かった追加費用がちょっとでも発生しただけで逆転してしまいます。
また、法人成りするにも会社設立費用が掛かり、手続きも煩雑で面倒な作業をするだけのメリットが必要です。
実際の所は、結婚して家族がいる場合の扶養控除の話や、その他の要件によって変わってくる点があり、一概にこの表で計算したことがぴったり当てはまるということは無いと思います。そこであまりこういったシミュレーションはされないのだと思いますが、一つの目安としてみていただければと思います。