固定資産台帳は企業が管理すべき?税理士が管理すべき?
公認会計士として会計監査を行っていた時は、固定資産台帳は固定資産を監査する上で必須の台帳で、主に減価償却費の計算を行うためのものという認識でした。当然企業が管理しているものと思っていましたが、税理士になって、顧問税理士が会計処理に深くかかわっているレベルの会社では税理士が管理しているのが一般的なようです。
固定資産台帳は、減価償却計算や償却資産税の申告の際に必要になる台帳で、貸借対照表を作成する上では必須の台帳になります。このような台帳が存在する理由は、貸借対照表が「前期から存在する資産や負債といった情報を当期に引き継ぐ」という性質を持っているために必要になります。
損益計算書に出てくる売上高や人件費といった数値は毎回一旦0になるので、特に台帳などが無くても毎年毎年0から発生した分計上していけば大丈夫です。しかし、売掛金や未払給与といった数字は前期から数字を引き継いでくるため過去からの経緯を記録して計算する必要が出てきます。しかしそれでも、売掛金が何年も滞留することは珍しく、未払給与も基本的に期をまたぐときの1ヵ月分になります。1ヵ月分程度であれば、台帳が無くても期中に集計することで対応することは可能かもしれません。
しかし、固定資産は建物などは数十年の単位で法定耐用年数が決まっており、償却が完全に完了するまでかなり長期間情報を引き継ぐ必要があります。そうなってくると、このように台帳がなければ過去の経緯が分からなくなってしまい、管理が非常に難しくなってしまいます。このように、決算書の情報を整理する上で、長期間情報を保存しておかなければ毎回調査・集計することになると大きな負担となるものに台帳管理が必要になってきます。
この台帳は、上場企業のように経理部門が企業会計基準に則った決算書を作成しなければならないような場合には企業が管理するのが一般的です。というのも、税理士はどうしても税務基準で決算書を考えてしまうため、企業会計原則に厳密にし画う必要がある決算書を作成することには比較的慣れていないというのが現実です。また、上場企業には経理のエキスパートがいるのが通常であるため、固定資産台帳管理も特に問題なく行われていると思います。
逆に、中小企業では経理のエキスパートが経理部門にいるケースは珍しく、企業会計基準にも精通していないうえ、上場企業と違って企業会計基準に沿った形での決算書の作成は必須ではないため、税理士の方が決算書の作成については精通しているというのが通常です。
会計に精通した方が管理するという事になっていますが、理想論を言えば迅速な会計処理を行う上でも、決算書の情報を活用して経営意思決定を行ううえでも本来であれば企業が管理するべきものであると思います。