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預かっていないのに預り証

お金というと、金銀財宝と同じイメージですが、最初は確かにお金=金銀財宝でした。金を細工する職人さんが、金を保管するために厳重な金庫を持っていたため、ついでに他人の金を預かることを生業にし始めたことが始まりです。

その時代には、金を預かり、お金を払う必要がある時にそこから金を出して、誰かに払っていました。しかしそのうち、お金を払う時に「預り証」を渡せば、わざわざ金を引き出しに行って引き出してから渡さなくてもいい事に気付きます。引き出して渡した金はまた預り所になっている金細工の職人さんの金庫に戻っていくのでいちいち出していたら二度手間です。

こうして、預り証がお金として流通し始めると、金細工の職人さんはこう考えました。

「預かっている金を全て引き出されることはまずない。預り証がお金として流通しているのであれば、別に預かってなくても預り証を発行して問題ないのではないか」

こうして、預かっている金と関係なく預り証が発行されるようになりました。これが金融の始まりと言われています。銀行の取り付け騒ぎという、銀行が預金を引き出すのを制限する事件が起こったりしますが、これはまさに預かっている金以上に預り証を発行した金細工の職人さんと同じで、実際には現金が無い分まで預り証を発行しているので全額はおろせないわけです。

理論上は無限にお金を発行することができる

こういった仕組みなので、理論的には国は国債を100兆円発行して日銀に買い取ってもらうこともできます。なぜそうしないのかというと、いきなりそんなことをするとお金の価値が大きく変わってしまい混乱してしまうからです。長いこと1円の価値があまり変わっていない現在の日本ではいまいち実感がわかないかもしれませんが、かつては1円はお札になっていたほど高い価値がありました。日露戦争の頃の国家予算は10億円程度です。今では1円では何も買えません。

これがいきなり多額のお金を発行して今まで1億円でやっていた仕事を1兆円で発注したりしたら、仕事を受けた側はものすごく儲かり、そのお金が色々なところで使われていった結果物価がどんどん上がってしまい、今まで持っていたお金の価値が一気に下がってしまいます。これは今まで努力して獲得したキャッシュが水の泡になっているのと同じです。

お金の価値を変えずに、1億円の仕事を今まで通り1億円で発注し、100兆円分の仕事をやってもらおうとしても、いきなりそんな仕事に対応できる業者はありません。突然100倍の仕事をやってくれと言われても無理です。どんなに稼働が低い会社でもせいぜい3倍ぐらいが限度ではないでしょうか。そんなわけで、お金の発行を制限するのはプライマリーバランスではなく、国全体の供給能力です。

MMT理論を証明した日本経済

この話は、MMT理論として話題になっています。この話が本当であることを証明したのが、今の日本経済です。日本経済は、もう数十年も前から財政破綻が叫ばれていますが、一向に破綻する様子はありません。

この話をちゃんと理解するには、「お金というのは実は単なるデータなのだ」という事を理解する必要があります。先ほどの金の話からも分かるように、実際にこの世界に存在する貴金属と結びついているイメージだとお金は限られた額しか発行できないイメージになってしまいます。しかし実際にはそんな限界は無く、その価値を安定させるために調整が必要ではあるものの、プライマリーバランスがとか、これ以上借金を増やせないとかそういった制限はないと言ことになります。

国の赤字は民間の黒字

プライマリーバランス黒字化というのは一見いい事のように見えますが、それは裏を返せば、民間の赤字化を意味しています。この関係を理解せず、プライマリーバランスも民間も黒字にしようとするところからボタンの掛け違いが始まってしまっています。国が豊かになるために国が赤字になるのはむしろ当然で、国が赤字になればなるほど民間は黒字になっていきます。国の貸借対照表の左側の資産より右側の負債の部が大きくなれば、パズルのピースがかみ合うように民間の左側の資産が大きくなり、負債が小さくなることで資産の方が大きくなります。

借方と貸方は一致するという複式簿記の考え方で考えると至極当然の話なのですが、規模が大きくなると全体が見えなくなり、いいとこどりができてしまうような気がしてしまうのが不思議です。


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