管理という言葉のあいまいさ
「管理する」という言葉は非常にあいまいな言葉だと思います。何か問題が起こった時に、「ちゃんと管理しないと」「管理できていなかった」という話になりますが、具体的にだれがいつどこで何をどうするという、いわゆる5W1Hのようなポイントがこの言葉からは全く見えてきません。「ちゃんとしないと」と「ちゃんと管理しないと」という言葉の間には多少かしこまった程度の違いしかないのではないでしょうか。逆に言えば、そういう具体的なことを指していないために様々な場面で使われる言葉のように思います。
そんなわけで、管理するとはなにかというのは状況に応じてかなり変わります。ここでは、ビジネスにおけるバリューチェーンの主活動の管理について書きたいと思います。バリューチェーンとは、事業を機能で分類したもので、例えば調達→製造→出荷→販売→アフターサービスといったメインの流れを主活動、人事・労務や研究開発といったサブの流れを支援活動と言います。
鎖の強度を決めているプロセス
バリューチェーンとは事業の付加価値を生む活動を「チェーン(鎖)」に例えています。サプライチェーン等もそうですが、活動はそれ単体で成り立っていることは稀で、連鎖的につながっているためこのように○○チェーンという表現がよくつかわれています。
主活動を鉄の輪がつながっている鎖だとしたときに、 鎖がちぎれるまで鎖を両端からひっぱったとします。このちぎれる時の張力は「最も弱い鉄の輪」の耐久力が決めています。どれだけ長い鎖になっても、最も弱い鉄の輪は必ずたった一つです。
バリューチェーン上で最も致命的な影響があるのはこの最も弱い鉄の輪にあたるプロセスに何か重大な問題が生じる場合です。逆に、それ以外の所に問題が生じたとしても、最も弱いプロセスに影響が出始めるまでに解決できればそこまで大きな影響はありません。
あくまで概念的な話として
したがって、この最も弱いプロセスを特定し、その部分を集中的に監視したり強化したりすることによってバリューチェン全体が危機に陥ることを防いだり、強化したりできることになります。
概念としてこの話は単純ですが、実務上はまずこの最も弱いプロセスを特定すること、また特定したとして、そのプロセスのみを監視したり強化したりすることは様々な理由から非常に難しい面があります。
経営しているとバリューチェーン全体の弱点はここだろうというのはなんとなくわかっているとは思いますが、明確に特定するのは日々変化する状況の中で、様々な課題に悩まされる中では難しいと思います。この特定を誤ると見当違いの所を監視・強化することになり危険です。また、他のプロセスで従業員が暇そうにしていたり、機械が止まっていても、最も弱いプロセスに影響がなければ無視してもいいはずですが、何となく働いてもらわないと心配になってくると思います。
この話は「管理とは何か」を考える際の方向性としての概念的な話であり、実務に適用するためには様々な壁(業務フローや付加価値を生む業務の明確化、管理手法の検討、部分最適から全体最適への思い込みの転換等)を超える必要があります。