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不正を発見する仕組み-内部統制

監査では一般的な言葉「内部統制」

コンプライアンスとかガバナンスとか特に大企業の間でよく使われる言葉ですが、似たような言葉として内部統制というものがあります。企業内部で誤りや不正を検知して修正する仕組みのことです。監査の世界ではよくつかわれる言葉で、期中に顧客の所に行って内部統制の有効性について検証するのが一般的です。

本来であれば、中小企業であってもこの内部統制は重要です。先日もニュースになっていましたが、下記のような横領事件も内部統制が働いていない結果起こります。

1千万円横領容疑で元経理の女逮捕 リゾート旅行に使ったか 警視庁

会社の口座から現金を引き出して着服したとして、警視庁捜査2課は、業務上横領の疑いで、IT関連会社「ADDIX」(東京都千代田区)の元経理担当者、及川華恵容疑者(48)=杉並区高円寺南=を逮捕した。「今は話したくない」と供述している。
 捜査2課によると、及川容疑者は平成26年に入社。1人で経理を担当していたという。30年11月に転職し後任の担当者が多額の払い戻しに気づき、横領が発覚したという。
 着服した総額は、平成30年までの3年間で数千万円に上るとみられ、捜査2課は海外のリゾート旅行などに使っていたとみている。
 逮捕容疑は、平成30年10月ごろ、会社名義の預金口座から、数回にわたり現金計約1千万円を払い戻して横領したとしている。

産経新聞ネットニュース

ポイントは、「1人で経理を担当していた」というところです。中小企業で内部統制があまり語られないのは、規模が小さいと一つの仕事を担当する人が一人になってしまい、お互いがチェックし合うという仕組みを作りにくく、なあなあになってしまうためです。

特に経理という細かい仕事は苦手な社長さんが多く、経理業務に特化した人材に任せきりになってしまいがちになるようです。税理士が記帳代行を行うにしても、日々の経理業務までは代行できません。会計とITというのは、「そこまで高度で難しいことをやっているわけでは無いけど、わからない人は拒否反応が出てしまう」という点でよく似ていると思います。

経理人材は人数のわりに需要が多いため、先ほどの記事のように不正を働く人を社内に呼び込んでしまう結果になってしまうのかもしれません。

内部統制の基本は相互チェック

内部統制において基本は「チェックする人と実行する人を分けること」です。経理人材が不足していて、経理をチェックできる人がいないから経理ができる人を雇い、その結果その人しか経理がわからないという状況になってしまっていると不正し放題の状況になってしまいます。

中小企業のオーナー会社などはよく奥さんが経理を担当していたりしますが、これも家族なら信用できるからというのが大きいと思います。そういうわけにはいかない場合、経理担当者に上司がいなければ社長がチェックする必要があります。

監査を行う場合は、銀行や取引先に直接残高を確認する手続があるため内部の経理担当者が不正を働いた場合つじつまを強引に合わせているとわかります。経理担当者にお金が流れた分、どこかでズレが生じるためです。

記事のような不正の場合、 内部で権限がある役職者であれば払い戻しが多い得意先に直接電話等で理由を確認してみるといったことをすれば同様のチェックが可能です。

大半の人は正直に仕事をされているでしょうし、わざわざチェックを行う労力をかけることはリソースがひっ迫している会社であればあるほど無駄なことのように思えるかもしれませんが、形だけのチェックに終わらせず実効性があるチェックを行うことが内部統制のポイントだと思います。