会計

「会計で会社を強くする」必要な○○と3つの重要性

マラソンで4時間を切りたくてまずやらなければならなかったこと

会計で会社を強くするとはどういうことなのかという話をするのにいきなりマラソンの話をしてしまって申し訳ありませんが、最終的につながってきますのでまずはマラソンの話をさせてください。

私がトライアスロンに挑戦しようと思った当初、「最初のステップとしてフルマラソンに挑戦しよう」「フルマラソンで4時間以内にゴール出来たらトライアスロンに移行しよう」と思いました。そうなってくるとフルマラソンで4時間以内に完走するにはどのぐらいのスピードで走らないといけないのかが気になります。マラソンの指標は1㎞当りにかかる時間が一般的です。4時間以内で完走するには1㎞を5分41秒以内で走る必要があります。

フルマラソンを目指して初めてジョギングをした日、私の記録は1㎞当り5分27秒でした。しかし、10㎞走るつもりが7㎞で力尽きてしまいました。その後もコツコツとジョギングを繰り返し、1㎞当り4分50秒ぐらいで10㎞走れるようになりました。そこで、試しに42.2キロ走ってみました。すると、25㎞当りから急速にスピードが落ち、最後の10㎞は1㎞8分ぐらいかかってしまいました…。

そこで、なぜ最後の10㎞でそこまでスピードが落ちてしまうのか、エネルギー不足なのか、水分不足なのか、筋力の問題か等々検討し、また終盤スピードが落ちることも計算に入れて走らないといけないということがわかり、最終的には生まれて初めてのフルマラソンで3時間45分でゴールすることができました。練習期間は3ヵ月とちょっとだったと思います。

3ヵ月とちょっとの練習で、生まれて初めてのフルマラソンで4時間を切ったというと結構驚かれますが、ここに「会計が会社を強くする」ヒントが隠れています。

会計は現在地を示している

上記のマラソンの例えでいくと、会計情報というのは「現時点では1㎞5分27秒で7㎞しか走れない」という情報に相当します。今の自分の実力がどの程度なのかを表す指標です。会計情報に意味が無いように感じている経営者の方は多いと思います。意味が無いように感じるのは目標が特になく「1㎞5分27秒で7㎞か。ふーん」で終わってしまっているためです。

会計情報は「本来ありたい理想の会計情報」があって初めて意味を持ち始めます。マラソンの話では「1㎞5分41秒以内で42.2㎞走れるようになりたい」という情報があって初めて意味を持ち始めます。

「スピードはクリアしてるけど、まだまだ距離が短すぎるな。同じペースで距離を伸ばすにはどうすればいいだろう」と比較してどれぐらい差があるのか、なぜ差があるのか、差を縮めるにはどうすればいいのかということを考える際に現在の立ち位置の情報は重要になってきます。そして、「1㎞4分50秒で10㎞走れるようになった」という次の情報(これは次年度の会計情報に相当します)により自分の努力がどの程度意味があったのか、このままでいいのか 作戦変更が必要かという判断ができるようになります。

数値で把握する重要性

「現状の情報である会計情報は目標を持つことで意味が生まれる」ということに加え、もう一つ重要な要素として「数値で把握している」という点です。私が、マラソンで1㎞当り〇分〇秒で走れているというのがわかるのはランニングウォッチで計測しているからです。ランニングウォッチも時計も持たずに、自分が何キロ走っているのかもわからずにがむしゃらに毎日走る練習をしていても、速く走れるようにはなると思います。でもフルマラソンで4時間切れるかは実際に走ってみた時の出たとこ勝負。もしかしたら3時間半ぐらいで走れるかもしれませんし、5時間かかるかもしれません。

その何時間以内というのも数値なので、それすらなかったら「間違いなく最初の頃よりは速く走れるようになった!」という実感はあるのかもしれませんが、非常に漠然としていて、目標とどれぐらい差があるのか、どのぐらい差が縮まっているのか、今のままでいいのかわかりません。決算書をろくに見ずに経営をされている経営者の方はこのように「なんとなく前よりはうまくいっている!」とか「最近ちょっと業績が悪い気がする…」といった感覚的なものだけを頼りに行動しているような状態です。

迅速に把握することの重要性

もう一つ重要なことは、出来るだけリアルタイムに把握するということです。ランニングウォッチは1㎞ごとにラップタイムを表示してくれます。今この瞬間どれぐらいのスピードで走っているかを教えてくれるため、スピードを上げないと間に合わないのか、もっとゆっくり走ってもいいのかといった判断ができます。これが、ゴールして家でパソコンで確認するとかだと、次回には活かせますが、走っているその時の意思決定には役立ちません。

会計情報も同様にできるだけ早く知ることで打ち手も早くなります。顧問税務業務で記帳代行のニーズは非常に高いですが、税理士に記帳代行を頼むということは、情報が反映されるのにかなりのタイムラグが生じるということです。年に1回の申告のみの依頼であれば年初の情報から1年のタイムラグになります。会計情報の増減理由も実際に記帳していないため税理士に聞くしかありません。

正確に入力することの重要性

そして、3つ目の重要性は情報は正確に入力する(把握する)必要があるということです。ランニングウォッチはGPSで若干ズレますが、かなり正確に1㎞を計測してくれます。これが、若干ではなく1㎞と表示しているのに0.5㎞の時があったり2㎞の時があったりとなってくると、ラップタイムが全く参考にならず4時間以内という目標に対してもいいのか悪いのか判断できません。会計情報も、入力漏れや適当な数値の入力等で、当てにならないとなってくると意思決定には利用する気になれません。

目標があった方が単純に面白い

私がやっていたマラソンも4時間切らないといけないと決めたのは私であって、誰から言われたわけでもありません。別に5時間でも6時間でも完走できなくても誰かに迷惑をかけるわけでも大きな不利益を被るわけでもありませんでした。経営では倒産したら周りに多大な迷惑がかかるため、私のマラソンよりははるかにプレッシャーがあり、最低限の目標として「倒産しない、自分の生活が送れるぐらいの収入は稼ぐ」というのはあると思います。

マラソンでも6時間で走ればいいのであれば私もそこまで努力しなくてもよかったですが、自分に超えられるかどうかの目標を課すことで様々な事に頭を巡らし、創意工夫する必要に迫られ、だからこそいろいろな気づきがあり非常にいい経験になりました。

目標を特に持たず、「業績もそこそこで普通に生活できているし、現状維持で十分。別に頑張りたくない」という経営者にとっては会計情報というのは別にあっても無くても関係ないのかもしれません。しかし、頑張ろうとするとよりいろいろなことに気が付くようになり、その経験そのものが面白いので、せっかく経営者になった以上は「自分が苦しくなりすぎない程度で、達成が5分5分ぐらいの目標」を掲げて頑張ってみるのが一番楽しいと思います。