「税務行政の現状と課題」という研修で聞いた話
こんにちは。当ブログをご覧いただきありがとうございます。
この記事では税務調査の頻度についてご紹介させていただきます。
公認会計士協会の賀詞交歓会で参加した研修は「税務行政の現状と課題」というテーマでした。参加しているのが税理士を兼務する個人事務所の公認会計士が多いからだと思います。この研修は税理士の研修単位も一緒につけられて一石二鳥です。
その中で、ちょっとおもしろいと感じたデータがありました。「実調率の推移」というデータです。ネット上にちょっと古いですが同じグラフがありました。
法人や個人事業主に対して、実地調査(税務調査)を行った割合です。私がもらった資料では、平成29年度まで記載がありましたが、最新の平成29年度はほぼ横ばいの3.2%と1.1%です。
単純に全ての法人や個人事業主を対象にランダムに抽出した場合で、法人は3.2%、個人は1.1%の確率で税務調査が行われているということです。実際には、この割合の母数には休業中や清算中の法人が含まれていたり、税額のある申告を行った納税者の中には全く税務調査の眼中に入らない少額の申告を行っている個人がいたりと、母数が膨らんでいるため実際の割合としてはもっと高くなるのではないかと思います。
一方で、ごく真っ当に申告しており、間違いも少なそうと思われている法人や個人は税務調査の対象にはなりにくいと思いますので、確率としてはさらに下がるのではないかと思います。
しかし、それらの要素を加味するための情報はありませんので、この情報をそのまま解釈すると、法人は約30年に1回、個人は約100年に1回しか税務調査に入られることは無いということになります。100年に1回なんて一生あるかないか、法人でも30年も続いた会社は比較的珍しいのではないかと思います。
増加する申告件数、複雑化する税務
実調率が減少傾向にあるのは、母数となる申告件数が増加しているうえに、連結や国際税務が絡むものが増えて調査委内容が複雑化し、実地調査を行っている件数が減少していることが理由です。
特に法人については平成元年の235万法人に比べて平成29年時点で311万法人と約76万法人も増加しています。平成元年から平成29年の30年間で、商法から会社法へと移行し、最低資本金制度が廃止されるなど会社設立が簡単にできる方に規制緩和が続きました。
実地調査を担当する国税庁の定員数は平成元年度の約54,000人からピークとなる平成9年度の57,202人を経て平成29年度には55,683人となっており、結果的にあまり増加はしていない印象です。
おそらく今後も、劇的な技術革新によって今までの10分の1の労力で実地調査が可能になるとかでもない限りは、普通に小規模な事業を営んでいる法人や個人事業主には実地調査に来るということはほとんどないのではないでしょうか。