小規模宅地の特例
土地建物を相続する際に、親と同居していたり、 生計を一にする親族 であったりすると、小規模宅地の特例といって評価額が減額されます。その減額割合は最大80%で、相続時に大きな影響があります。
うちの場合、妹が父親と同一住所に住むようになったのですが、はなれのような感じで屋根がつながっていない建物に別々に住んでいます。妹の子供は週末父の方の建物で寝ており、食事は基本的に一緒に食べています。
このような場合でも、各建物に居住可能な台所やトイレ等の機能が備わっている場合は別居とみなされます。同居とみなされ、妹がその土地と建物を相続するのであれば問題なく小規模宅地の特例が適用されるのですが、別居であっても、父親と妹が生計を一にする親族にあたる場合は、妹が引き続き同じ場所に住むのであればその部分に関して小規模宅地の特例が適用されます。
生計を一にするの意義
「生計を一にする」というフレーズは、税務の話の中ではよく出てきます。通常は、同居とか単身赴任とかで財布が一緒のケースだろうとあまり疑問に思う要素はありません。
しかし、今回のように一見別居している。収入源も別。でも食事は一緒に行っているし、同じ宅地内ではなれのような感じなので光熱費は折半しているようですが請求は共通です。
生計を一にするとはどういうことなのか、所得税基本通達2-47に定義が記載してあります。
(生計を一にするの意義)
所得税基本通達(国税庁ホームページ)
2-47 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
まず(2)ですが、同居していればよっぽどのことがない限り生計を一にすると認められます。同居していると電気代がどれだけとか、食費がどれだけとかどうしても混ざってしまって分けられないものです。生計を一にする方が有利なことが多いので、あえて労力をかけてなんとか厳密に分ける必要がありません。
問題となるのは(1)です。これは、単身赴任や地方から東京の大学に行って仕送りで生活している子供がいる、おじいちゃんおばあちゃんが長期入院してしまったといったケースです。このイメージでは仕事や学校、病院という場所の問題が無ければ同居しているようなイメージになります。
そう考えると妹の家族のケースはおそらく認められないのではないでしょうか。家がつながっていて、一度も外に出ることなく自由に行き来できると要件を満たすようですし、いわゆる本当のはなれで独立して生活できる機能がない建物に離れて住む場合は認められるようですが、今回は家が別でそれぞれ生活できる機能を備えています。
父の相続の問題が生じるのはまだ先です。小規模宅地の特例が使えるかどうかでかなり相続財産が圧縮できるので、 それまでに生計を一にする親族の要件を満たすことができるように生活を変えることができるのか、検討していきたいと思っています。
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