基準期間だけではなく特定期間という判定基準がある消費税
仕事の関係で消費税の納税義務判定について勉強しています。
↑の本を読んでいるのですが、当初「消費税の納税義務判定なんて面白くなさそう…」と思っていたのですが、私のような新参の税理士は設立間もない個人事業主や法人を顧客にする可能性が高く(顧問税理士がいないため)、この話は非常に勉強になります。消費税は課税されるとキャッシュフローに与える影響がかなり大きく、多額の支出が発生する可能性があります。正確に理解しておかないと思わぬ無駄な出費に足元をすくわれかねません。
2年前だけではない!特定期間という考え方
消費税は2年前を基準期間として、課税売上が1,000万円を超えた場合に納税義務が生じます。これが原則なのですが、これは準備期間を考えると前年度の判定では間に合わないからという理由から来ているというのは以前記事でご紹介しました。
ところが、前年度の前半6ヵ月ですでに課税売上1,000万円を超えた場合であれば、まだ半年もあるので準備できるはずです。だったら納税してくださいねという制度が特定期間の消費税納税になります。正しくは前年度が8ヵ月しかなかったとしても最初の6ヵ月で課税売上1,000万円を超えても2ヵ月あれば大丈夫だよねということで納税義務が生じます。
ただし、この特定期間については課税売上だけでなく給与等(給料や賞与、役員報酬など)の支払額で判定してもいい事になっています。つまり、「うわーやばい!今年前半で課税売上1,000万円超えそう!来年から課税事業者!?」と思った個人事業主の方で、一人でやっていて給料等を1円も払っていない人は免税事業者のままでいい事になります。
給料等が1,000万円をこえてるのに課税売上が1,000万円を超えないケースでも課税事業者に該当しますが、今度は課税売上が超えていないので免税事業者のままでOKです。このケースは居住用の不動産賃貸業(家賃収入は非課税売上)の場合などが該当します。
それでも課税事業者を選択するメリット
「消費税‐課税事業者でお金がもらえる?特殊なケース」という記事でご紹介しましたが、この課税事業者になろうと思えばなれるというのは消費税が還付されるケースに該当した場合に有効です。調整対象固定資産がある場合に課税事業者にあえてなろうとすると、その後3年の免税事業者になれないという縛りが生まれますが、この特定期間で引っかかった場合は規定が異なるため、その縛りがありません。
居住用の不動産賃貸業の場合、多額の不動産投資を行うことも多いのではないでしょうか。この場合に、平時から給与等の支払額が特定期間で1,000万円を超え、かつ課税売上が1,000万円以下だった場合、還付される年だけ課税事業者、その後免税事業者に戻るといういいとこ取りが可能になります。
給与等の支払額というのは実際に半年間で支払った額であり、6ヵ月目の給料が翌月〇日払いとかで、6ヵ月の期間中に支払われなければ支払額に入りません。また、法人の場合は前年度が8ヵ月以上あれば特定期間がありますが、6ヵ月経った後に準備期間が2ヵ月確保できない場合は特定期間の話はさらに前の年にさかのぼって考えるなど、いろいろと細かい話がありますが、この免税事業者か課税事業者かという話は、課税事業者の方が得するケースもあるという話があることで非常に判断が複雑でそれだけに面白いテーマになっています。こういった所こそ専門家である税理士の出番だろうと思います。