税務業務に関して、「これからはAIに仕事を奪われる」「コンサル型の税理士を目指さないといけない」といった声がよく聞かれます。
この記事では、コンサル型税理士の定義について整理するとともに、通常の税理士との違いを明確にしたいと思います。
コンサル型税理士の定義
コンサル型税理士の定義は人によって様々かと思いますが、本記事におけるコンサル型税理士とは「顧問にすることでキャッシュが増加する税理士」と定義したいと思います。
税理士は、税の専門家として納税者が自らの所得を計算し、納税額を算出する申告納税制度の推進の役割を担います。
日本税理士連合会
通常は、税理士を顧問とすると顧問料分のキャッシュが費用として流出します。その対価として税務上の正しい会計処理ができるようになり、円滑に申告作業が行われます。
この税理士本来のサービスに加え、税理士がいなかった場合に比べて会社に残るキャッシュが増加する何らかの支援ができる税理士のことをコンサル型税理士と定義します。もし、顧問料以上にキャッシュの増加効果をもたらすことができれば、報酬のコスト負担等で解約したいと思う顧問先はほぼいなくなるのではないかと思います。
キャッシュを増加させる施策
税理士として、キャッシュが増加する支援を行うにあたり、関係する手段には下記のようなものがあります。
優遇税制
税理士として、最も身近なキャッシュ増加効果をもたらす施策は優遇税制です。これについては、税理士として税務申告業務を行うにあたり当然に把握しておくべきものになりますが、顧問先が税理士を雇っていなければ知らないまま申告してしまい、不要なキャッシュの流出を招く可能性が高いものになります。
補助金
補助金については、税理士が決算情報を把握しているという点から関係がある支援になります。補助金獲得のためには事業計画を作成する必要があり、事業計画の基礎となる情報が決算情報です。
税理士本来の業務から逸脱する部分として、SWOT分析や市場分析など経営分析に関する知識や経験が必要になりますが、この点がコンサル型と言われる所以であり、通常の税理士が「決算書は正しく作ります、あとは経営者がうまく利用してください」というスタンスであるのに対して、コンサル型税理士になると「正しく作った決算書に基づいて、将来の事業計画の作成まで支援します」というところにまで踏み込むことになります。
借入
補助金も広義の資金調達になりますが、一般的な資金調達手段である借入の支援を行うことも税理士の業務と関係しています。こちらも、銀行を説得するための事業計画の作成が必要です。この事業計画は、貸付を行う機関を説得する必要があるため補助金に比べてシビアな財務計画が要求されます。
補助金が、資金的に余裕がある会社が積極的な投資に対して文字通り補助的に用いる資金調達であるのに対して、借入は資金繰りに課題を抱えている会社がキャッシュに余裕を持たせるために実施する施策であり、より汎用性・即効性が高い施策です。
補助金が返済不要であるのに対し、借入は返済が必要というデメリットはありますが、より多くの会社からニーズがある施策です。
収入増加
本業の事業に関する収入が増加するようなアドバイスを行うというのが、最もキャッシュの増加効果が高い施策ですが、これは本当のコンサル業務です。
この領域のコンサルは、財務データ以外の様々な業務上把握できるデータを基に分析を行い、収入増加に資するアドバイスを行う必要があり、的確なアドバイスができるとコンサル型税理士というより経営コンサルタントになります。
ただ、収入増加を支援するという点でいえば顧問先が得意先に対して価格交渉を実施するにあたり「税理士にこのままだと厳しいと言われたから」と税理士のせいにしてもらうといったような利用のされ方は比較的容易かと思います。
実際のコンサルタントの現場でも、社内で施策を推進する部署と施策を実施する現場が対立しないように、そのような利用のされ方をすることはよくあります。
コンサル型税理士への進め方
とはいえ、通常の業務で時間がとられている中、追加で何かをするというのは厳しいので、理想的な流れとしては最近のDX化でも言われている情報技術を活用した業務の効率化によって、今までよりも少ない時間で正確な会計処理になるような仕組みの構築を行い、できた時間でそのようなコンサル型の支援を行うということになるかと思います。
業務効率化の例としては以下のようなものがあります。
・クラウド会計によりインターネット経由でいつでも遠隔でチェックすることができるようになり、手待ちや隙間時間を活用可能になる。
・Web会議システムにより、移動時間を短縮する
・会計ソフト自身の機能によりチェックや会計処理を自動化し作業時間を短縮するとともに正確で統一された処理を可能にする