いわゆるロストジェネレーション(1990年半ば~現在)と言われている時代に社会出た人々は借入について恐怖心を持っている人が多いように感じます。起業まもない会社経営においても借入はできるだけ避けてきてる若い社長さんによく出会います。
借入は恐いものなのか
なぜロストジェネレーションと借入に対する恐怖心に関係があると感じるのかというと、ロストジェネレーションと言われる時代にはGDPがほとんど成長しておらず、したがって物価もほとんど変わっていません。
そういった経済環境下ではお金の価値も目減りすることはありません。一方で、いわゆるバブル期(1980年代~90年代前半)の経済環境では物価はうなぎのぼりに上がり続けていたためお金の価値はただ持っているだけでは目減りしていってしまいます。
これは過去の借入金についても同じことが言えます。わかりやすくするために1年で倍に物価が上昇する世界を考えるます。1,000万円借りて100円で売れるものを1年で1万個作れる機械(年間100円×1万個で100万円の収入)を購入したとします。このまま物価が変わらなければ10年間売り上げを続ければ借金した分の収入になります。
これが次の年には物価が倍になる世界だとすると1年目は100万円の収入ですが、2年目には200万円、3年目には400万円、4年目には800万円になります。しかし借入れたお金は物価に連動して増えたりせず、1,000万円のままです。したがって、4年以内に借金を返済することが出来ます。見方を変えれば、借入れたお金の1円当たりの価値が下がっていった結果、借入金が圧縮されたことになります。
こういう物価上昇中の環境では借金した方が得です。しかし、物価下落の環境では1円当たりの価値が上がっていく結果、借入金は同じ金額でも膨張していくことになります。こういう世界しか知らないのがロストジェネレーション世代で、できるだけ借金をしない、リスクを取らない方が得をする世代だったために、借入金についてのマイナスイメージが強くなるのは必然です。
借入をうまく使える人が勝つ時代の再来
しかし、時代はコロナによって変わりつつあります。というのも、金融機関にダムのようにプールされていた日銀発のキャッシュが様々な形で市場に流れてきているからです。
コロナで経済活動が止まっていますが、お金の流れが止まっているのであって、お金そのものは蒸発して消えてしまったわけではありません。今まで誰かに渡していたはずのお金の行く先が変わっていたり、自分の懐で動かなくなっているだけです。この点について誤解されている方も多いのではないでしょうか。そこに、新たに給付金や貸付によって市場の外からキャッシュが追加されているわけです。
この後、経済活動が以前のような形で戻るか新しい形になるかは別にして、また正常にお金が流れ始めたら追加されたキャッシュ分お金の価値は下がり始める可能性が高いです。
もしそうなってきたとしたら、先ほどの話のように物価が上昇する局面に入りお金を持っているだけだと損をする時代が再度やってきます。
借入によるレバレッジ効果とは
1,000万円しか持っていない人が投資できる額は当然1,000万円ですが、それに加えて2,000万円借りることができれば、3,000万円投資することができます。
投資した金額の年間5%のリターンが見込める事業に投資する場合を考えた時、手元の資金だけで投資したら50万円ですが、お金を借り入れた場合は3倍の150万円を得ることが出来ます。これがレバレッジ効果です。てこのように、自分の力以上のものを動かすことが出来るという効果です。
儲かったお金を更に投資すると複利の効果で事業規模のスピードが借入れたケースと手元資金のみで行ったケースとで全く変わってきます。
借入における注意点
上記のようなイメージが正しい借入の仕方ですが、その点を踏まえると「返すあてが無い借入は危険」ということが分かります。また、資金を増やせばそれに比例して事業が拡大できるという状況ではないのにただ借入れてしまっては支払利息分マイナスになるだけですし、お金があるような気がして散財してしまうなどいい事はありません。
いま、コロナ禍で借入が推奨されていますがこれについても、あくまで「お守り」「最後の砦」としての側面で推奨されています。つまり、使わずに済むなら使わないようにして据置期間後にそのまま返すことを想定しています。もちろん、コロナ禍であればこそ事業拡大のチャンスが到来している事業に投資するというのであれば健全な使い方なので有効だと思います。
ロストジェネレーションではそういった積極投資を行うと失敗しやすいという経済環境だったため借入れても投資先が無く借入が抑えられていた、できるだけ借入れないことを良しとしていたという側面もあります。
もし、「借入・資金調達について誰に相談すればいいのかわからない」といったことでお悩みであれば是非当事務所ezakitakakazu.office@gmail.comまでご連絡ください。