会計

「やよい青色申告オンライン」を確認する上での問題点

「インストール不要で、初心者でもかんたんに使えるクラウド青色申告ソフト」

小規模な事業を営む個人事業主の強い味方である「やよい青色申告オンライン」ですが、今回持続化給付金に係る収入申立書の確認業務を行っていて、このソフトが第三者のチェックを想定していないという事に気が付きました。

確かに、このソフトはそんな必要がない小規模な事業者向けに必要最小限の機能に絞り込んだソフトなのだと思います。1年間無料で使えるそうで、資本の少ない小規模事業者の味方です。

入力日付を持っていないという欠点

やよい青色申告オンラインは、いつその仕訳を入力したのかという入力日付を持っていません。これは第三者が確認する際には非常に痛い欠点です。というのも、今回のような収入申立書の確認を行うにあたって、一番知りたいのは売上を上手く条件に合致するように調整するという作業をやっていないかという事です。

逆に言えば、それをやっていないことが確認できればかなり不正リスクが下がります。その確認に最も有効なのがこの入力日付です。他にも確認事項はありますが、入力日付の確認はやりたいところです。1月や2月の売上計上について、つい最近仕訳を入力しており、その金額によって条件がちょうど合致するように調整されているとしたらかなりリスクが高いと思います。

こういったことがシステム的に調べられないというのは、このシステムが第三者のチェックを想定していないソフトだからです。非常に小規模で、顧問税理士を雇うことはおろか確定申告のみ依頼することも資金的に難しく、また税務調査が入るほどの規模が無い事業者に利用してもらうことを想定しているのだと思います。

客観的な証拠能力が重要な会計

たしかに、平時であれば機能を限界まで削り安価に提供できるソフトというのは魅力です。しかし、今回のコロナの一件で、どんなに小規模な事業者であってもこのように第三者のチェックを受ける可能性があることが分かりました。こうなってくると、やはり会計の客観的な証拠能力の確保は、どんなに小規模な事業者であっても重要であると思います。

仮に、インチキしたい人がいるとして、バレては都合が悪いからと手書きやこのような簡易的な機能しかないソフトで会計を行うとどうなるかというと、まず確認してくれる税理士がいなくなります。またいるとしても非常に高額な報酬が必要になります。

会計士・税理士のような士業は専門家としての信用を使って業務を行っているので、信用が毀損するような事態になったら仕事が成り立たなくなります。したがって作業そのものというより不正リスクにプレミアムがついてしまい、報酬が上がってしまいます。中にはリスクに非常に鈍感な税理士の方がいて安価にサインをしてくれるかもしれません。しかし、そういった方は結果的に気付かないうちに不正に加担することになり、淘汰されていってしまうのではないかと思います。

収入申立書の確認業務というのは非常にリスクが高い業務です。会ったこともない方が持ってくる売上の証明を確認し、一定の心証を得るというのは至難の業です。大抵のそういった方がお持ちの資料というのは、手書きのメモであったり、不完全な情報であったり、とても簡単に心証が得られる証拠とはなりえないものばかりです。取引も現金ベースでは確認不能です。そういった中でも本当に困っている人がいれば協力したいと思いますが、嘘偽りがないという証言だけで信用するのは困難です。そういった中、確認しやすいように会計情報を整理しておいてもらえれば短時間に確認が可能になります。

嘘偽りなくという会計を目指すと、損をすることもあるかもしれません。しかし、結果的に成長し成功する会社というのは、短期的に損をすることになっても正しい会計を目指しているものです。会計を正しくすれば問題が早期発見され、仮に撤退の判断が必要な場合にもズルズルと行ってしまうことが無くなり、結果的手に浅い傷で済むという事があります。

新規開業特例を使おうとする非常に小規模な事業者には、この経理の重要性が少なからず伝わっているのではないかと思います。