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最もシステム化が有効な投資の世界

伝説のトレーダー集団「タートルズ」

私が大学生の頃ちょうどITバブルの真っただ中で、ソフトバンク、ヤフーや当時を知る人にとっては懐かしい光通信といったIT関連会社が台頭し、株価が急騰していました。当時私の父も株である程度利益を出していたらしく、「これで投資を勉強しろ」と私に百万円を渡してくれました。その後のITバブルの崩壊に父が巻き込まれたであろうというのは想像に難くありませんが、百万円を返せとは言われませんでした。

私は今も昔も馬鹿正直な性格なので、その百万円を使い込むことなくマネックス証券に口座を開設し、早速株の売買を始めました。私が投資を始めたのはその時からです。あれから二十数年。そこそこ儲かることもあり、数百万の含み損を抱えて親や奥さんにお金を借りたりすることもありと(結果何とかなったのでよかったですが)、結論としては「投資で生活できるほど稼ぐことは相当に難しい」という事です。しかし、投資を勉強させてくれた父には感謝しています。

過去に読んだ投資の本の中で、ダントツで勉強になった本に、「タートル流投資の魔術」という本があります。この本を書いた人は、タートルズという伝説のトレーダー集団のなかでもトップの成績を出していた人で、書いてある内容は人生において何かを選択する際にも参考になる非常に示唆に富む内容でした。

そして、この本を読めば読むほど「投資というのは単純で難しい」という複雑な気持ちになります。書いてあるルールは決して複雑なものではありませんが、その通りにやることがいかに難しいか。著者も「種明かしをしたって、できる人は少ない」と言っています。

人の心が正しい投資の邪魔をする

投資というのは、「儲けたい」という欲が失敗を誘発します。これは、実際のビジネスにも通じるものがあります。「儲けるためには儲けたいと思ってはいけない」という禅問答のような事実が厳然と立ちふさがり、その矛盾と闘いつつ自分の心に打ち勝った一握りの人が成功する世界です。

現実のビジネスでも、お金を稼ぎたくて頑張っている人よりも世のため人のためになりたくて頑張っている人の方がはるかに大規模に成功することができます。渋沢栄一氏、松下幸之助氏、稲森和夫氏等々、誠実にビジネスを行うことの大切さを説き、実際に信じられないほど成功している人は枚挙にいとまがありません。これらの人々は儲けたいという欲に打ち勝って、本当に世のため人のためになっているかというところを冷静に見つめていたからこそ、買う側がファンになりビジネスの規模がどこまでも大きくなっていたのだと思います。

投資の世界と実際のビジネスと違うのは、投資は買う人の役に立つといったような、相手の考えていることは全く見えない点です。単に上下する株価や為替相場のような数字を相手にするため、世のためとか役に立つという発想ではなく、純粋にこれから上がる確率が高いのか下がる確率が高いのかといったところを冷静に見つめる力が問われます。「世のため人のため」を考えるよりもはるかに難しい話です。

人の心を持たないシステム

人の心が投資の精度を落としてしまうため、人の心を持たないシステムにトレードをやってもらうというのが、システムトレードですが、トレードの世界ではシステムの方がはるかに正確で、ルールに厳密に従ったトレードを行ってくれます。

「タートル流投資の魔術」の著者もタートルズが活躍したのははるか昔の話ですが、その当時からシステムトレードの有効性に言及しています。システムトレードであれば、自分が手を動かしたり相場を監視したりすることも必要なくなるため、いい事しかありません。

しかし、それでも「リスクとリターンは対応している」という現実からは逃れられません。システムも損を出す状況と利益を出す状況というのがあり、絶対に利益を出すシステムというのは存在しません。

個人的にはリスクとリターンの対応は質量保存の法則と同じぐらい厳密に我々の前に存在している法則だと考えます。一見「ローリスク・ハイリターン」のように見えるものであっても、リスクが隠れて見えないか、そのリスクが顕在化する可能性が極めて低いのと引き換えに顕在化したら取り返しがつかないリスクであるということです。

それを踏まえた上で、淡々と心に振り回されずにトレードできるシステムトレードは有効で、AIやプログラミングによるトレードが一般化されてきているのは自然の流れだと思います。昔は、自分で指値や逆指値を設定する程度でしたが、今では様々なシステムトレードから高いパフォーマンスを発揮しているものを選んでトレードをやってもらうという時代になりました。

トレードというと非常に高度な作業で、頭を使わないとできない事のような気がしますが、最もシステムにとって代わられやすい、昔からシステムにやってもらうことについて研究が進んでいる分野になっています。