少子高齢化による人手不足と情報技術の発達
経理業務を効率化し、決算を早期化しなければならないという話は私が社会人になってから何度となく聞いた話で、恐らく永遠のテーマなのだと思います。はるか昔、決算書の作成が手書きだった頃は決算書が完成するまでにどれぐらいの期間がかかっていたのでしょうか。
この頃は会計基準も単純で今とあまり変わっていなかったかもしれません。決算日から半年後だったのかもしれません。どれぐらいの期間だったのかわかりませんが、その頃も「もっと早く決算情報を把握したい」というニーズはあったのだと思います。
最終的な理想の形は決算が締まった瞬間に全ての決算整理仕訳の数字が確定し、仕訳が切られて決算書が完成するというものです。しかし、企業の規模が小さい場合であってもそこまでいくのはほぼ不可能で、まして全国や全世界に事業所が展開している企業には情報が届くまでのタイムラグがあり、締まってから情報が整理されるまでにかなりの時間がかかります。
これらの決算作業や経理業務を効率化する方法として、人間が手作業で行っていることをITの力で自動化するというのが効率化です。自動化することで、人の手による作業のミスが減ると同時に、人手が不要になります。
これは、少子高齢化で若い人が減ってくることで単純作業を担ってくれる人が減るため、やった方がいいという事からやらないと業務が回らないという方向へ徐々にシフトしていく話です。
単純作業しかできない人?
このように、業務を自動化した結果、今まで膨大な時間をかけて3人でやっていた作業が1人でできるようになってしまったとします。長期的には人が減っていくため、それで問題ありませんが、直近のことを考えた時に余った2人はどうすればいいのでしょうか。
これで不要になったから解雇という流れになってしまうと、現場担当者はとても協力する気にならないと思います。「自分の仕事を奪わないでくれ」と思ってしまうのが自然な流れです。それでは、余った人は何をすればいいのでしょうか。一つは、人手が足りていない部署への転属です。
そしてもう一つが、経理の本来の業務を行うことです。経理業務というのは、本来情報を整理して終わりではありません。しかし、昨今の複雑化する会計基準や大規模化する組織により情報を整理して決算書をなんとか作るという事炉で力尽きてしまい、「投資にどれぐらいお金を回せるのか」とか「来期の経営成績の予測は」とか、そういったことは完成した決算書任せになってしまっているのが現状です。
本来であれば、財務モデリングによりKPIを把握し、KPIの変化予測から将来の経営成績や財政状態を推測し、打ち手を考え提案するというのが経理の仕事です。そういった「考える」というところは人間でなければできない部分で、しかもやり方が分かればやりがいのある楽しい部分になります。
「考えるのなんて大変だ、単純作業でお金がもらえた方が楽でいい」と考えている人は徐々に淘汰される時代が近づいているのかもしれません。