会計情報はある程度操作できる
会計というのは、仕訳の切り方によってかなり印象が異なる財務書類を作成することが可能です。会計に苦手意識があり、会計情報を見ても全く分からないという人が想像する以上に幅のある会計処理が可能です。
例えば、ある金額を資産として計上すれば利益を増やす結果になり、費用として計上すれば利益を減らす結果になります。会計監査などを受けていない小さな会社でたびたび見かけるのは、立替金や仮払金勘定を使って、返ってくるあてがほとんど無いお金を計上しているケースです。
本来であれば、返ってくるあてがほとんどない債権は貸付金や売掛金のような債権として計上して、貸倒引当金を計上しておくべきです。返ってくるあてがないので、全額引当金を計上し資産ではなく費用にするべきです。立替金や仮払金に計上してしまうと、費用ではなく資産になっているため費用が減る結果になります。このような処理をしている会社は赤字を減らしたいという理由があるケースが多いです。
赤字になれば払う税金が減りお金は借りにくくなる
赤字を減らしたい理由としては、借入を行う上で、金融機関の評価を上げるためというのが最も大きいのではないでしょうか。金融機関はお金を貸す先を格付けしており、格付けが高いほど有利な条件で借り入れることが可能です。
格付けは、正常先→要注意先→要管理先→破綻懸念先→実質破綻先→破綻先の順で下がっていきます。これらは会社の業績によって区分されるため、借入需要がある場合は会社の業績をできるだけ良くしておく必要があります。
借入需要があるというのは、それだけお金が足りない状態になっているという事であり、業績が悪化していて入ってくるキャッシュが減っていることが原因になってる場合も一般的です。そうなってくると財務情報も悪化していくわけですが、それを少しでも良く見せるためにできるだけ資産に計上できるものを資産に計上し費用になるのを遅らせたいという動機が生じます。
逆に、税金を払いたくないという動機がある場合には、できるだけ費用にできるものは費用にして利益と相殺したいと考えることになります。仕訳を切る際にその意思が反映され、資産寄りに計上したり費用寄りに計上したりといったことが起こります。
大企業で、会計監査を受けている会社はこのような判断の偏りは許されず、恣意的な処理をしているとすぐに指摘を受けてしまいますが、そういったチェックがない会社はこのような恣意的な判断が入ってきてしまったとしても、税務調査でもなければ訂正するようなプレッシャーはないためそのまま財務書類が作成されてしまいます。
恣意的な会計処理は長い目で見ると損になる
自分の都合のいいように会計処理をしていると、例えば会社をM&Aで売却するといった場合に問題が明るみに出て取引が破談になるといったことが起こりえます。この会社は誠実に会計処理を行っていないと判断されると、会社の価値に疑義が生じ会社の価値を財務書類がきちんと表していないリスク分のプレミアムが乗ってしまい、売却時に受け取れる対価が減ってしまうことになります。
また、恣意的な処理が常態化するとわずかなら目立たなかったものも徐々に大きな金額になっていき、修正することによる影響が甚大になってきます。そのうち影響が大きすぎて修正することができなくなり引き返せないといった事態になりかねません。
結局は、誠実に処理するに勝るものは無く、結果的に倒産することになったとしてもそれは傷が浅いうちに撤退したことになります。もし不正によって生き永らえたとしても破綻を先延ばしにしただけに過ぎず、結果的に深い傷を負うことになります。