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世界は数字でできているのか数字で表現できるのか

週末に、約350年にわたり謎に包まれていたフェルマーの最終定理が解き明かされるまでの話を動画で見ていて、先日数秘術の話で世界は数字でできていると考えていた話と少なからず関係があり、その経緯が非常にドラマチックでした。

350年に渡り数学の天才を苦しめ続けたフェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理というのは、17世紀のフランスの裁判官であったフェルマーが趣味でやっていた数学で、古代ギリシャの数学者ディオファントスが記した「算術」という書物の余白にメモした定理です。

フェルマーはこの「算術」に記載された問題を解きながら自分でより難しい問題を考えるという事をして遊んでいました。その「算術」の問題の中で、「x²+y²=z²」というピタゴラスの定理が出てきた時にフェルマーはこのように考えます。

「ピタゴラスの定理に当てはまる自然数はたくさんあるが、3乗や4乗といった2乗を超える場合はどうだろうか」

そして、3乗以上になると当てはまる自然数が一つもない事に気が付きます。そして、その「算術」の余白にこのようにメモを残します。

「私はこの定理について驚くべき証明を発見したが、それを記すにはこの余白は狭すぎる」

ただの数学好きのおじさんがそんなことをメモしても戯言だとしか思えませんが、このフェルマーは趣味で数学をやっていたとはいえ、本職の数学者に自分が作った問題を送り付け本職の数学者を負かすというのを楽しみしているほど数学の天才的な才能がありました。その彼が、嘘で証明を発見したなどというのはプライドにかけてあり得ません。また、趣味でやっていることなので書物にこのように記して証明は省くということは珍しい事でもおかしなことでもありませんでした。

そしてこの何気ないメモがその後350年の間、数多の稀代の数学者を打ちのめし、人生を徒労に終わらせるという悪夢を生み出しました。死屍累々の数学者の山を越え、一つ、また一つと謎は解き明かされ、1995年にアンドリュー・ワイルズという天才によってついに終わりを迎えました。

ピタゴラスの定理のピタゴラスは数秘術の始祖

ピタゴラスというのは、世界は数字でできているという宗教の教祖で、数秘術を生み出した人と言われています。数秘術はその後プラトンへと引き継がれ、タロットやユダヤ教の中で神秘主義思想と結びついて深化していきます。ピタゴラスの定理という偉大な定理を発見したピタゴラスですが、この宗教は自然数しか認めなかったため、小数や分数やルートなど更なる数学の発展を妨げることになったともいわれています。

人類最高の叡智が挑戦するゲーム

天才数学者たちは、このような定理を証明を積み上げて導き出しているわけでは無く、まず直感的に「これは正しい」と感じるのだそうです。それはまさに天啓のようなもので、なぜ正しいと感じるのかは最初はわからず、その正しさを証明していくという順番になるようです。このような順序のため、世の中にはまだ証明が行われていないものの、恐らく正しいと思われる「予想」という状態のものがたくさんあるそうです。

フェルマーの最終定理もアンドリュー・ワイルズが証明を完了するまでは正確にはフェルマー予想というべきものだったようですが、フェルマーが証明を発見したとメモしたことに敬意を表して定理と呼ばれていたとのことです。

アンドリュー・ワイルズは10歳の時にこのフェルマーの最終定理に出会い、「この定理を証明するのは自分だ」と感じたとのことで、ほとんどの作業をたった一人で行っていました。名声を独り占めしたいという思いもあったのかもしれませんが、「こんな楽しいゲームを人に渡したくない」と言っていたそうです。

私にとっては数学と言えば受験の一科目で、私立文系なので数学自体を途中で放棄してしまいましたが、満点を取るなんて夢のまた夢です。しかし、そんな数学の問題をやすやすと満点でクリアしてしまうような数学の天才たちにとって、このような人類未踏の問題は、本当に楽しいゲームのようなもので、この世界の謎に挑戦するようなワクワクすることなのだと思います。

この世界が数字でできているのか、この世界を数字で表現できるのか、この世界が数字でできているから数字で表現できるのか。数学の世界にはまだまだ解かれていない謎がたくさんあります。