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知っていればそんなことはおこらない?サプライチェーンゲームとIT

新卒の頃に研修で行われた「サプライチェーンゲーム」

私がITの力について最初に考えさせられたのは、最初に入った会社の研修で実施された「サプライチェーンゲーム」というゲームでした。今調べてみると、「ビールゲーム」というそうです。私の時はビールではなく飴で、最後に飴がもらえました(笑)

ビールゲーム(英語:The Beer Game、 The Beergame またはThe Beer Distribution Game)は、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院の教授グループが、サプライチェーン・マネジメントに関する重要ないくつかの原理を実際に見せるために、1960年代に考案したシミュレーションゲームである。ゲームのテーマは、ビールを流通させて市場の顧客の需要に応えることである。ビールはいくつかの組織がつらなるサプライチェーンを通じて供給され、1チームが1つのサプライチェーンとしてプレーする。このサプライチェーンを運営し、受注残や在庫のコストを最小限にすることを目指す。

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一つのチームは4つの役割に別れます。小売業者・卸売業者1・卸売業者2・メーカーです。小売業者が消費者の需要の情報を入手し、その情報を基に後ろにいる卸売業者1に発注します。卸売業者1は小売業者の発注情報を基に卸売業者2に発注します。卸売業者2は同じように卸売業者1の発注情報を基にメーカーに発注します。

この作業を何度も繰り返して、できるだけ在庫や受注残(在庫不足)を少なくしたチームが勝ちというゲームです。メーカーは生産から2ターン後に飴が完成する等タイムラグがあります。

私は確かメーカーの役をやっていたと思いますが、メーカーは最初在庫を吐き出すために実際の発注よりも少なめに生産しようとします。ところが、途中で「飴に病気の予防効果があることが紹介され消費者が殺到した」とかなんとかいわれて、どうやら消費者の需要が急増したらしいということをゲームを運営している人に言われます。

在庫を減らすために発注よりも少ない量しか生産していなかったため、慌てて増産しようとしますが、いったいどれだけ需要が増えたのかメーカーからは見えません。小売業者の発注量も間に二人の卸売業者がいることでよくわかりません。

メーカーの所に来る頃には非常に大きな発注になっています、今まで生産を絞っていたメーカーでは大きな受注残になります。そうこうして、やっと生産が追いつき始めた頃には「消費者の需要が落ち着いた」ことが知らされます。

なんとか発注に対応して納品できるようになってきた頃には発注はほとんどなくなっており、今度は在庫が大量に残り始めます。こうして、ゲームが終わるころには大量の在庫を抱えたメーカーになっています。

実は需要はほとんど増えていなかった

ゲームが終了して、運営していた人から種明かしがあります。「消費者が殺到した」時に増えた需要は、例えば平常時の需要が1ターンに飴10個だったとすると、11個だったり12個だったりといった程度だったのです。それを知っているのは小売業者だけで、その向こうにいる卸売業者もメーカーも需要が2倍、3倍になったのではないかと思い大量に在庫を抱えてしまいます。

このゲームを体験した時に「もし小売業者が受け取っている需要の情報と同じ情報をメーカーも受け取れていたら」と非常に大きな衝撃を受けました。この、小売業者と同じ情報をメーカーも受け取るために必要な技術がIT(情報技術)なのだというのが、私のITの重要性を実感として感じた初めての体験でした。

あれから20年が経過し、世の中もITも進歩してきていますがこの「情報の非対称性を解消する」というITの役割は変わらず、ますます重要になってきています。ITのせいで炎上したり、そこまで悪いことをしていない人が必要以上に叩かれたり、デマ情報に多くの人が踊らされたりといった負の側面もありますが、一方で正直者が馬鹿を見ないで済む世の中になってきているようにも感じます。