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M&Aの話でたまに出てくる「ITデューデリジェンス」

前職のグループ会社のコンサルティング会社に出向していた時にお世話になった元事務所長の紹介で、福岡事業承継・M&Aセンターの構成メンバーとして活動しています。

・福岡事業承継・M&Aセンター(外部リンク)
https://f-bsma.jp/

今度の研究会で何か自分の分野にかかわることについて発表して欲しいとのことで、どういった内容について話すのが一番いいか考えてみました。

公認会計士・税理士としては財務面・税制面の話、中小企業診断士としては経営面・事業面の話ですが、どちらも構成メンバーに私より経験豊富な先生方が多数在籍されていますので、比較的手薄そうなITデューデリジェンスをテーマに説明することにしました。

M&Aの中で、デューデリジェンスという買収する企業を評価するフェーズがあります。○○デューデリジェンス(DD)という形で様々な方面のDDがあり、一番代表的な企業価値評価のベースとなる財務DD、法律関係の法務DD、コンサルタントが活躍する事業DDなんかが最もメジャーなものですが、財務DDと若干関係がある税務DDや、法務DDから派生する労務DD、知財DDなど、多岐にわたり、一番M&Aの中で手がかかるフェーズだと思います。

そんなDDの説明資料の中で、たまに「ITDD(ITデューデリジェンス)」と記載されていたりすることがあります。大抵の場合、全体概要の中でちょっと出てくる程度か、事業DDの一部ととらえられる程度で詳しくは触れられないのが常ではないかと思います。

ITDDが詳しく触れられない理由

詳しく触れられないのには大きく2つの理由があります。

理由①:金額的に重要ではない

まず最初の理由は、IT投資というのは業界によりますが資産全体から見てそれほど大きくありません。毎年の保守運用の費用も同じです。M&Aを行う際には、できるだけ短期間に評価を終える必要があり、影響が大きなところから潰していくのがセオリーです。特に、企業価値が大きく変動するような要因を見逃してしまうと適正だと思っていた買収金額が適正ではないことを見逃したりと意思決定自体を誤ってしまうため見逃すわけにはいきません。

そんな中、価値評価的に例えば「ITが機能しておらず、資産としての価値はゼロです」といったところで、影響が数%だったとしたら誤差の範囲内です。そんなところを一生懸命調べる暇があったら、簿外に多額の負債(今後支払う退職金など)を抱えていないかとか、棚卸資産はほんとに額面通りの価値があるのかとか、そういった所の方が企業価値的には重要になってきます。

理由②:ITデューデリジェンスをできる人がいない

とはいえ、IT(システム)が企業活動に与えている影響は大きく、現時点の資産価値ではなく今後M&Aによって二つの会社が一つに統合するにあたり、まったくばらばらのシステムを今後も使い続けるというのは現実的ではありません。そういった、今後与える影響という点では重要な話ではあります。

というわけで、ITデューデリジェンスは重要だということが頭の中ではわかったとしても、そもそも専門にやっている人材がほとんどいません。ITのスキルがある人はいるでしょうし、何らかのデューデリジェンスのスキルがある人もいると思いますが、ITをデューデリジェンスするスキルがある人というのが非常に希少です。ITにも様々あり、デューデリジェンスするには広範囲の知識が必要になってきます。かといって、さまざまなIT分野の専門家を集めて大人数でデューデリジェンスするほどの費用もかけられないのが現実です。このため、詳しく触れたくても触れられないという面もあるのだと思います。また、ITデューデリジェンスは実施されずにM&Aが行われるケースが非常に多いのだと思います。

企業活動と切っても切れないIT(システム)

ITデューデリジェンスは、むしろM&A後に係る労力や費用を予測するにあたって非常に重要になってきます。また、PMI(アフターM&A)と言われる、実際の統合作業の際にはシステムの統合は避けて通れません。少なくとも、財務会計システムや人事給与システムなど統一して使わないと必要な情報が作成・報告できないようなものについては、「M&A後も業務がやりやすいようにバラバラで使いましょう!」なんていうわけにはいかないことは容易に想像がつくと思います。もちろん、業務のやり方としてそれが成立するM&Aもあるかもしれませんが、シナジー効果はほぼゼロです。

ITをどのように運用しているかは企業によって千差万別で、「うちは特殊だから」と言わない企業の方が珍しいぐらいだと思います。その運用を買い手企業に合わせるのか、統合を機に全く新しいシステムを入れ、新しい運用をデザインするのか、といったことを事前に検討し、「これぐらい今後コストがかかるだろうから、その点も頭に入れて買収しなければいけないな」といったことを検討することでより互いに誤解のないM&Aが実現できます。

少なくとも、デューデリジェンスの段階で売り手企業がどのようなIT資産を持っていて、どのように運用しているのか(自前か、ベンダ依存か等)等々検討していくことは、事業全体においても重要な話なのではないかと思います。


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