経営に役立つ情報を知りたい経営者の方向けの記事

流動比率は高ければ高いほどよく固定比率は低ければ低いほどいい理由

安全性を分析する基本的な指標「流動比率」と「固定比率」

財務分析の指標について説明している時に、流動比率は高ければ高いほどいいのに、固定比率が低ければ低いほどいいという理由についてとっさに上手く答えられず、なるほど財務指標を当然のこととして知っている人にとっては簡単な事でも、よくわからない人には難しい事なのだと思いました。

流動比率とは、貸借対照表の流動負債に対して流動資産が何%かという指標です。流動資産は1年以内に現金化される(もしくはしようと思えばできる)ものであるため、ほぼ現金に近いものとみなします。一方で、流動負債は1年以内に返済が必要な負債であるため、1年以内に現金化できるものの方が大きくないと、返済する際にさらにお金をどこかから調達してくる必要があり、よくありません。現実には短期借入金などは借り換えを繰り返すことになりますが、理論上の話になります。

このため、流動比率は最低でも100%以上ないと危険水準ということになります。この流動比率の中には即販売できないと現金化できない棚卸資産も含まれるため、この棚卸資産を除いた流動資産と流動負債の比率でみる当座比率というより厳しめの指標もあります。どちらにしても、%が高ければ高いほど安全です。

一方で固定比率は、固定資産が自己資本に対して何%かという比率です。自己資本というのは返済の義務がありません。一方で固定資産は投資してから回収するまでに1年以上かかる資産のことであり、固定資産を運用して事業を行いキャッシュを獲得するわけですが、その効果は間接的で固定資産に投資した資金はしばらくは回収できません。したがって、固定資産を獲得するために調達した資金をすぐに返さなければならないとなると、生み出すキャッシュが間に合わず資金繰りが苦しくなってきます。

このため、固定比率は逆に、自己資本でどれだけ固定資産をカバーできているかの方が重要になります。そこで、固定資産の方が自己資本よりも低ければ低いほど、固定比率の%が低ければ低いほど安全ということになります。こちらは、自己資本だけで固定資産をカバーするのは厳しいことも多いため、返済に時間がかかってもいい長期借入金を加えて、若干甘い指標になる固定長期適合率という指標があります。

財務指標を分析しても具体的なアクションは導き出せない

以前、会計情報は目標値が無いと活かせないという話を書いたことがありますが、財務指標についても同様のことが言えます。この安全性の指標を出したところで、では具体的にどういったアクションを取らないといけないのかということはわかりません。比較的安全か危険かといったことはわかりますが、それは恐らくこのような指標を出さなくても感覚的にわかっていることだと思います。

なので、うちは安全性に課題を感じているから流動比率200%、固定比率100%を目指そうといった目標値を決めて、流動比率を今より上げるアクションを取るにはどうすればいいだろうか、固定比率を今より下げるアクションを取るにはどうすればいいだろうかと考える必要があります。

しかし、安全性の指標だけを改善しようとすると、棚卸資産を無駄に抱えたり、長期借入を無駄に増やしたりすることになりかねません。結局は、部分的な指標を見るだけではダメで、様々な指標が全体的に改善する策を講じる必要があるため、財務分析というのは「漠然と感じていることを数値化してみる」といった程度の意味しかないのかもしれません。

流れとしては「なんとなくここが課題だって言うことはわかっている。だから周りを説得して課題解決に動いてもらうよう説得したい」というところが出発点で、「財務分析を使って目に見える指標として数値化する」という段階があり、「思った通りこんなに指標が悪い。だからここの指標を改善するためにこういう改善策を講じよう」と周囲を説得するという形で財務分析を利用するのがいいのではないかと思います。個人でやっている人が自分でチェックするためにもこのような利用の仕方が効果的です。