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仕訳を分析する上で現れる諸口の壁

総勘定元帳は全ての取引の流れを表現している

会計システムのデータを利用した分析については、仕訳のデータさえあれば大抵の分析が可能になります。会計システムは究極的には仕訳のデータを作成するためのシステムであり、仕訳のデータから試算表は財務諸表など会計システムに求められる報告資料が作成できます。

会計システムあるべき方向性としては、極力人の手を介さず正確な仕訳を漏れなく起票できる事であり、全ては無理かもしれませんが承認プロセス等を司るワークフローなどと連携して会計システムが自ら一次情報を収集し、仕訳を切れるようになってくれるのが未来の会計システムだと思います。その時に根拠となる資料を添付ファイル等で取引に結び付け、人がチェックする際にチェックしやすくすることができるようになれば監査の自動化の未来が見えてきます。

総勘定元帳は会計システムからデータ出力できるのが普通で、相手勘定も記載欄があり、1行ごとのデータから仕訳の全貌を推定できるようになっています。いつどのような仕訳が切られたのかが分かれば、様々な会計情報を得ることができます。キャッシュの流れは現預金勘定の仕訳を追いかければわかりますし、仕訳データに部門や事業などのセグメント情報が付加されていれば、セグメントごとの財務諸表の作成が可能です。

相手勘定が見えなくなる「諸口」という作法

仕訳というのは、勘定科目が1対1の関係になっている者だけではなく、1対NだったりN対1だったり、N対Nだったりするものがあります。相手側が複数の勘定科目にまたがっている時、会計システム上は相手勘定は「諸口」となります。複数あるのでわかりませんという意味です。

しかし、一定のルールを設定すれば、相手勘定を当てはめることは可能と思われます。例えば、下記のような1対Nの仕訳があるとします。

借入金 100/預金 105
支払利息 5/

この時、預金の総勘定元帳データの相手勘定の情報は諸口になってしまいますが、以下のような仕訳として考えれば相手勘定は借入金と支払利息になります。

借入金 100/預金 100
支払利息 5/ 預金 5

N対Nの場合に割合で配布するのか、上の科目から順に充当していくのか等、ルール決めが必要になりますが、相手勘定を絶対に諸口にしないように総勘定元帳を作成することは可能です。しかし、あまり聞いたことがありません。さらにシステムによっては、キャッシュの支払い時に必ず未払金勘定を通過させる(不明な差異で消し込めないような状況を吸収させるためかと思います)というものもあり、それもまたキャッシュの流れを不透明にしてしまいます。

諸口という処理はそもそも手書きで総勘定元帳を作成する際に手間を省くために作られたルールなのだと思います。機械的に処理させるようにプログラムされれば技術的にはそれほど難しい事ではないと思いますし、情報としてはより詳細になるため都合が悪いことは無いのではないでしょうか。

仕訳データではダメなのか

総勘定元帳とは別に仕訳帳という帳簿もあります。総勘定元帳が勘定科目ごとに情報を整理したものに対して、仕訳帳というのは仕訳ごとに情報を整理したもので、仕訳帳を見れば当然相手勘定がわかります。しかし、データ分析を行うという観点からいくと、仕訳帳データもダメです。仕訳帳のデータと総勘定元帳のデータは実は同じデータの加工の仕方が違うというだけで、元を辿れば同じものです。仕訳帳というのは伝票番号で管理された複数行の総勘定元帳データをくっつけて作成されます。したがって、総勘定元帳データがすべてあれば伝票番号をキーに仕訳を再現することは可能です。別の思想で設計されている会計システムもあるかもしれませんが、総勘定元帳データと仕訳帳データを共通にすることはデータの不整合を防ぐ意味でも合理的です。

この複数行で一つの情報になっているというものでは、データを容易に加工できず、機械的な集計が難しくなってしまいます。それでも関数やマクロを使って強引に自分の都合のいいデータを作成すればいいのですが、システムによって異なる構造のデータを毎回自分の使いやすいように加工するというのは意外と手間がかかるうえ、人の手を介すためミスが生じる可能性も高まります。

そもそも、こういった問題があまり重要視されていないのは、会計データを利用した財務分析、経営分析があまり利用されていないという事情もあると思います。