今年最も注目を集めている補助金、事業再構築補助金の公募要領が公表されました。予算規模1兆円を超える超大型補助金です。第1回の申請受付は4月15日開始予定、公募締切は4月30日です。年度内に4回の公募が予定されています。
事業再構築補助金とは
国や自治体が企業が投資をする際に一部補助を出してくれるのが補助金ですが、事業再構築補助金とは、文字通り「事業の再構築」を狙って投資を行う際に一部補助してくれるものです。
「事業の再構築」ってどういうこと?
公募要領によれば、事業再構築補助金における事業の再構築とは4つの分類のいずれかに属するものを言います。
①新分野展開
既存の事業を依然として主力にしつつ、新たな事業に進出するケースです。最も多いケースではないかと思います。「新たな事業に進出した」というのをどう定義しているかというと、補助事業完了後3~5年の計画期間内に会社全体の売上シェアの10%以上を占める事業として成長できたら、「新たな事業に進出した」と考えます。
また、新たな事業なので既存の事業の生産性を向上させるのでは不十分です。新たな商品・製品・サービス(製品等の新規性要件)を新たな市場(市場の新規性要件)に販売する必要があります。
新規性要件ってなに?
新規性要件とは、「今までやったことがないコト、モノ」「進出したことが無い市場」であるという要件です。
具体的には製品等の新規性要件は以下の要件を満たす必要があります。
①(その企業が)過去に製造等した実績がないこと
②製造等に用いる主要な設備を変更すること
③定量的に性能又は効能が異なること(定量評価ができる場合のみ)
③については、審査する人が「ん?これって類似品じゃないの?」と疑念を抱くような製品等だった場合を想定しているのではないかと思います。「素人には違いが分からないと思うけど、定量的にこんなに違いがあるんですよ!」とアピールできる余地ということになります。
市場の新規性要件は以下の通りです。
・既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
つまり、既存事業と競合してはダメだということです。競合するということは新分野ではないとの判断です。
②事業転換
新分野展開は業種も事業も主力の部分は変わらず、総売上高の10%以上になるパターンでしたが、事業転換は業種はそのまま、事業を大幅に転換してその事業を主力にするというパターンです。主力になるので新分野展開と異なり、売上高は会社全体の総売上高のうちトップの割合になる必要があります。
③業種転換
先ほどの事業転換は業種(建設業や飲食業といったジャンル)は変わらず、同業種の中で事業を転換するケースでしたが、業種転換は業種そのものも転換することを狙います。すなわち、飲食業が建設業に変わるといったような思い切ったケースです。コロナによって壊滅した業種もあれば逆に伸びた業種もあります。壊滅した業界の会社が伸びている業種へ転換を図る際などに利用できます。
④業態転換
事業転換・業種転換とは異なり、主力事業の業態を転換するものです(受注生産方式から大量生産方式への転換、対面販売からオンライン販売への転換等)転換した業態での売上高が新分野展開同様10%以上になる必要があります。
上記4種の分類に組織再編行為を絡める事業再編
昨今注目されているスモールM&Aを意識してか、上記の4つの分類を組織再編行為によって実現するケースを事業再編として認めています。組織再編行為には、合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡等があります。組織再編の話は、それだけで本が一冊出版できるぐらいの話になるのでここでは詳細は割愛します。
事業再構築補助金申請前にまずやらなければならないこと
「アイデアがあり、要件にも合致しそう!」という方がまず気を付けなければならないのは「gBizID(GビズID)を持っているか?」という点です。補助金の申請に一度でもチャレンジしたことがある方にはおなじみのgBizIDですが、今まで補助金について全く経験が無い方は「なにそれ?」と思われるかもしれません。
gBizID(GビズID)とは
登録したい方はこちら(外部リンク)
gBizIDとは様々な行政サービスに利用可能なIDとの触れ込みですが、主に補助金申請に必要なIDです。持続化給付金等もそうでしたが、最近の補助金系の行政サービスへの申請は完全にIT化にシフトしています。紙を一切排してインターネット上ですべての手続きを完了できるようにするために、gBizIDの登録は必須です。かつては、IT弱者救済のために紙による申請も並行して認められていましたが、コロナの影響も後押しして現在ではIDなしでの補助金申請は不可能になっています。
インターネット上で本人であることを証明するために利用されるのがIDです。応募予定でgBizIDを未取得の方は申請から取得まで数週間を要します。今回の事業再構築補助金のためには仮IDの発行によって迅速化が図られているようですが、今後も必要になるので至急取得されることをお勧めします。
まずは主要申請要件がクリアできるかチェック
応募のスタートラインに立てるかどうかは主要申請条件をクリアできるかどうかで決まります。この要件をクリアできなければ応募資格すらないということになります。
①売上が減っている
売上が減っておらず現状成長している事業者は応募できません。しかし、その条件はそこまで厳しいものではなく現状維持で推移しているような事業者であれば、偶然条件に合致することもありそうな内容です。応募月の前月を基準にその前6か月間の中で任意の3か月の売上合計がコロナ前の同月比で10%以上減少すればクリアできます。任意の3か月は連続している必要はなく、一番都合がいい月を3つ選択できます。
現時点でこの要件をクリアできない場合でも、次回以降の公募に応募できないか月次の売上をきちんと計上、モニタリングし、チャンスをうかがうといいのではないかと思います。
②新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等に取り組む
主要申請要件の中で、最も肝になるのはこの2番目の要件です。補助金獲得のために温めているアイデアが先日示された事業再構築指針と合致しているかは、よく検討する必要があります。事業再構築は、現業の延長線上ではダメで、何らかの新しい試み、それもちょっとした新しさでは認めてもらえません。既存の強みを生かしつつ全く新しい分野に挑戦するようなイメージになっています。
今考えているアイデアがまさに事業再構築の定義に当てはまれば問題ありませんが、ちょっと再構築というには弱いということであればもう一度アイデアを練り直す必要があります。今一度、事業再構築指針の手引きをよく読み検討してみてください。特に、「○○の新規性要件」というフレーズが出てくるスライドに注目です。
③認定支援機関と事業計画を策定する
当事務所も認定支援機関ですが、認定支援機関の協力が必要になっています。認定支援機関がどこまで関与するかは各企業の補助金獲得実績等の経験がどれだけあるかによって変わってきます。補助金獲得経験が無く、認定支援機関のリードが無ければ何もできないのであれば、補助金獲得額の〇%等の成果報酬を提示している中小企業診断士や税理士の協力を仰いでも結果的にプラスになると考えます。頼らずに1円も補助金を獲得できないよりはましです。
事業計画のポイントについてはこちらの記事にまとめました。
【事業再構築補助金】ものづくり補助金との違いに注意!ありがちな残念な事業計画3つ
逆に、ものづくり補助金など自力で補助金を獲得した経験があり、今回もほぼ自力で申請を行うという事業者であれば、認定支援機関にほとんど負荷がかからないのに成果報酬の〇%のような価格設定では全く割に合いません。認定支援機関にはほとんど頼らずレビューを依頼するのみというような場合は、報酬について柔軟に対応してくれる認定支援機関を探す必要があります。
この辺り、公募要領では以下のように注意書きがあります。
事業計画の検討に際して外部の支援を受ける場合には、提供するサービスの内容とかい離した
事業再構築補助金 公募要領
高額な成功報酬等を請求する悪質な業者等にご注意ください。
何をもって提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等とするのかについては明確な基準は示されていません。前述したように、認定支援機関がしっかりと伴走するのであれば報酬は高額になりますし、ほとんど独力で何とかするのであれば同じ金額設定でも不当に高額な悪質な業者ということになってしまいます。
認定支援機関がどの程度まで関わるかについては以下の記事にまとめました
【事業再構築補助金】認定支援機関にどこまで申請に協力してもらう?3段階の支援依頼
認定支援機関をお探しの方はご連絡ください
事業再構築補助金に応募したいが協力してくれる認定支援機関がいないという方はezakitakakazu.office@gmail.comまでご連絡ください。