早く・正確に・漏れなくダブりなく
会計システムの初期の段階はかつての手書きの伝票をデジタル的に再現したものでした。手書きの伝票を再現するメリットは、運用のイメージがそれまでの手書きの伝票を作成していた時と同じで移行しやすいという点です。
この手書きの伝票を再現する会計システムが主流だった時代には、効率化というと「いかに入力スピードを速めるか」という点に着目していました。インタフェースは変わらず、入力作業をやりやすくする工夫が重ねられていました。
この手書き伝票のイメージを会計システム上で再現するという時代はしばらく続きました。いまだにこの発想から抜け出せない会計システムも数多くありますが、ネットバンク、クレジットカード、電子マネーとインターネット上で取引の情報が管理できるようになった結果、ダイレクトに会計システムがその情報を取り込むことができるようになりました。
手書きの伝票を再現する会計システムが主流だったのは、運用イメージがそのまま引き継げるというだけでなく、インターネットバンキングが存在せず通帳で管理する預金口座取引や現金取引が主流だった時期には、紙の情報を会計システムに手入力する必要があったため、ほとんどの取引で人の手を介していたというのも大きな要因だったと思います。
人間が手入力するのに比べて、データを取り込んだ方がデータは早く・正確に・漏れなくダブりなく会計システムに入力されます。このため、効率化のポイントとしては可能な限り機械的に会計システムに取り込める仕組みを作り上げることがポイントになってきます。
情報は一か所から一か所に
ERPの出現により情報の一元管理という当たり前のようで非常に難しいことを技術的に乗り越えようという試みがなされましたが、現実にはいまだに情報の一元管理をテーマにしたプロジェクトがいたるところで走っているのが現状です。DXの事例として情報の一元管理がさも画期的な事のように喧伝されていたのを見ましたが、このテーマに関するチャレンジは20年以上前から変わっていません。
問題は情報の利用者と入力者の乖離、どこまで詳細な情報を入力するのかという線引き、詳細な情報が分からないから分析が十分にできないという思い込みからの脱却等々、多岐に渡り実は非常に難しいテーマです。しかしこの問題も、情報の発生と実際の取引の発生が同時に起こるサイバースペース上の取引が主流になるにつれて、人の手をほとんど介することなく情報の入力が可能になってきています。
情報の一元管理というと、データベースを一か所にすることにスポットが当たりがちですが、同じ情報を複数のポイントで入力しないというのも重要になります。入力するのはその取引が発生したポイントで、そこで人の手を煩わせてしまうと、その情報を入力者が利用しない場合にはストレスになり実現が難しくなります。そこでも、取引情報が人の手を解せずに会計システムに流れ込んでくれば理想的です。
なぜ情報が必要なのかをもう一度考える
なぜこのように情報を集める必要があるのかというのを、改めて考え直す必要があります。単に税務申告のため、決算書の作成のためとなってくると、単なる事務処理のために多くの人を動員し、高額の報酬を税理士や会計士に支払うという事になり、コスト負担以外の何物でもありません。
これを投資と捉えるためには、収拾された情報を基に意思決定に使う必要があります。会計情報を意思決定に有用な情報とするためには、その会計数値を構成する要素を分解し、意思決定によってコントロール可能なKPIに落とし込む必要があります。