現金払いの取引登録の煩雑さ
取引明細がWeb上にデータとして存在しているインターネットバンキングやクレジットカード等の入出金については、会計ソフトが自動で取得してくれるようになっています。面白いのは、大企業が一般的に利用しているパッケージシステムにはそういった機能はないのではないかと思います。個人事業主や小規模企業がよく使うfreeeのような会計ソフトの方がはるかに効率化しているように見えるのは不思議な気がします。もちろん、大企業がそういった自動取得に対応しにくいのは、テクノロジーが遅れているという話ではなく、承認プロセス等の手続が複雑にならざるを得ないため、勝手に取得されたら困るという事情もあるのかもしれません。
しかし、現金取引については依然として入力が必要です。税務の顧問先に対しては現金取引を効率的に入力するためにExcelで現金出納帳の作成をお願いすることが多いですが、これにしても結局システムに入力するのかExcelに入力するのかという違いでしかなく、現金取引がデータ化できない以上どこかで入力するというアクションが必要になってきます。
この現金取引(及び自動取得ができない取引)も、できるだけ省力化しようという努力は続けられており、レシートをAI-OCRで読み取ることで解析して手入力するステップをできるだけ少なくするということが試みられています。freeeのAI-OCRがレシートを読み取る力は弥生会計より弱いと聞いたことがありますが、徐々に精度が上がってきている気がします。
AI-OCRの技術によって、レシートを見ながら手入力する手間が芸減されてきていることから、個人的には現金出納帳を作るのではなく、レシートを読み取って読み取り切れなかった部分を手入力で補うというのが最も手数が少なくなるのではないかと思っています。
取引の発生から会計システムへの入力のリードタイムを最短にする
会計処理のリードタイムを考えた時に、決算報告や税務申告のタイミングは決まっているため、理論上リードタイムを短縮するには取引の発生タイミングを遅らせることが必要になってきます。しかし取引の発生タイミングを遅らせることもまた不可能なため、取引の発生→決算報告・税務申告までのリードタイムを短縮することはできません。
会計処理の理想的な流れとしては取引が発生した瞬間会計システムに入力され、決算報告や申告のタイミングになった時にはすでにすべての会計処理が完了していて即報告・申告が可能な状態になっているということになります。すなわち、取引の発生→会計処理のリードタイムは会計処理のタイミングがいつでもいいので短縮が可能です。会計処理→決算報告・税務申告のリードタイムも直前になってバタバタと会計処理を行うことでリードタイムが伸びる可能性を考えるとリードタイムが短縮されることになります。
というわけで、現金取引が発生した直後に会計システムに入力するのが一番いいということになります。そうすることで経費の計上漏れが少なくなり、決算状況もリアルタイムに近い状況になってきます。
私の場合は、できるだけ直後にスマホからレシートを読み取り、取引を登録するようにしています。レシートは戻ってから月ごとに分けた封筒に突っ込んでおきます。そういう風にするようになってからほとんど会計システムへの入力に負荷を感じなくなりました。レシートを貯めておいてから事務所で一気にスキャンした方がなんとなく効率的な気がしますが、取引発生直後に出先で入力してしまえば1枚だけでほとんど時間がかからず、むしろストレスがありません。
記帳代行だと不可能な取引直後の入力
記帳代行だと、このような取引後足入力はできず記帳代行のためのコストも発生し、決算状況もリアルタイムに把握できないというところでかなりデメリットも大きいことが分かります。記帳代行にかかるコストが一定であるとすると、このように入力負荷が軽減されていけばいくほど、記帳代行を選択するメリットは薄くなっていきます。
税理士は基本的に記帳代行をあまりお勧めしません。かつて、紙にすべての取引を手書きで記録していた時に比べて劇的に入力する負荷が減少している現代では、「会計のことはわからないから」「面倒だから」という理由で会計を学ぶ機会を失い、さほど面倒でもない作業をコストをかけて外注するのはあまりお勧めできない状況にますますなってきています。