社長が一番働いている会社と一番働いていない会社
社長が誰よりも働いている会社と社長が誰よりも働いていない会社と両極端な会社を想定した場合、比べるまでもなく社長が誰よりも働いている会社の方がいいような気がします。従業員からしても、社長が暇そうなら内心「お前がやれよ」と思いたくなると思います。
創業期では社長というのは会社の中でオールマイティなリソースであると思います。他の誰にもできない仕事ができ、誰でもできる仕事も誰よりも高い質でできるのが社長というリソースです。組織が大きくなると社長は社長しかできない意思決定に特化していき、誰でもできる仕事がむしろできなくなってきます。
会社の初期に社長が暇そうにすることの方が難しいですが、組織が大きくなるにつれて徐々に人に任せることができるようになります。社長ができるだけ会社のために時間を使って会社を成長させることは重要なことですが、それが行き過ぎると「社長がいなければ何もできない会社」になってしまいます。
継続企業の前提
会計の世界では、「継続企業の前提」という言葉が出てきます。継続企業の前提というのは、「企業は未来永劫存続しつづけるという前提に立っています」という意味で、会計基準はこの前提に立って設定されており、倒産を想定していません。監査が義務付けられている会社では、倒産の可能性が高まると「継続企業の前提に疑義があります」という表現で監査報告書に注意書きがされ、「継続企業の前提が崩れそうだけど、監査は継続企業を前提として行いました」という但し書きがされます。
継続企業の前提が成立するのは、企業は人が入れ替わったとしてもその機能を失わず存続できるためです。社長が頑張ることは決して悪い事ではないものの、「社長がいなければ何もできない会社」になってしまうと、社長の寿命と共に会社も寿命を迎えることになってしまいます。
社長が暇そうにしている会社
昨今、事業承継やスモールM&Aと言われる事業承継先が無いことから事業を売却するという流れが中小企業に押し寄せています。中小企業は社長の存在感が大きく、事業を承継するにもM&Aで売却するにも、社長がいなくなったら会社として機能できないとなってしまってはどうにもなりません。そうなる前に、社長の中にあるノウハウを吸収する後継者を育成できればいいですが、それには数年単位の長い期間と社長自身に後継者を育成する意思が必要です。また後継者の方にも途中で投げ出すことなくノウハウを吸収しようという気持ちも重要になってくると思います。
ところが、社長が事業承継や売却について考える頃には、後継者を育成するような十分な期間が無く、また長年自分でやってきたことを人に教えてやってもらうという発想の転換はなかなかできないのが現状です。そうなってくると、事業を承継しようとか売却しようとか考えてから後継者を育成しようという考え方ではなく、「自分がいなくても回る仕組みを考えよう」という発想を通常の事業運営の中でしておく必要があるのではないでしょうか。
自分がいなくても回る仕組みというのは、社長が暇そうにして仕事をしていなくても回るしくみです。社長は役員報酬を受け取るため、本当に何もしなかったら役員報酬分で利益を圧迫します。なので本当に何もしないわけにはいかないと思いますが、常に自分の代わりにやってくれる人もいるという状況で仕事ができる環境を整える必要があります。