監査

監査の未来-クラウド会計と閲覧権限

そろそろ研修の単位が心配な時期

こんにちは。当ブログをご覧いただきありがとうございます。
この記事では、今日受けた情報システム監査研修の話をご紹介させていただきます。

今年度の研修単位の締め切りまであと2か月ぐらいになりました。まだ40単位に達しておらず、職業倫理の単位はどこで取ればよいのやらわからない状況です。監査法人時代の暇な時にやっていたe-learningはもうありません。

今日は、会計freeeの方も講師として登壇される情報システム研修があったので行ってきました。公認会計士協会の研修なので監査がテーマなのですが、思いのほか面白かったです。

クラウド会計の与えるインパクト

会計freeeというと小さな会社が税務の決算書を作成するための会計ソフトという印象でしたが、従業員数百人規模の監査対象の会社のなかにも会計freeeを使っている会社があるようです。

クラウド会計というのは、インターネットがつながる環境であればいつでもどこでも、PCからでもスマホからでもアクセスでき入力・照会できる会計ソフトのことを言います。

クラウドという言葉がまだあまり一般的ではなかった頃、簡単なアプリケーションがネット上で動くようになって、IT業界の友人と「そのうちERPみたいな大規模システムもこんな風にネット上で動くのかねぇ」「えー、まさか」とか言っていたのはほんの10年前ぐらいだったと思います。今では、システムはクラウドでサブスクリプション契約(ソフトウェアを保有せず毎月使用料を支払って利用する形態)が一般的になりつつあります。

クラウド会計システムに閲覧権限で入る監査

会計freeeだけではないと思いますが、取引にスキャンした証憑画像を添付することもできるようになっています。画像加工のリスクはありますが、今までもそういった改竄リスクはありました。取引に必要な証憑がすべて画像ファイルとして添付されていれば、会計システムの中だけを見て監査ができるようになります。もちろん、実査や立会など現場に行く必要があるものもあるでしょうが、一般的な証憑を確認して取引の妥当性を確認する監査は会計システムの中だけで完結します。

監査人に閲覧のみできる権限が付与されたIDが渡され自由に見れるようになると、現場に行かなくとも、 技術的には事務所や家からでも監査が可能になります。この「必ずしも現場に行かなくてもいい」「必ずしも経理担当者が対応しなくてもいい」という事実は監査のあり方を大きく変える可能性を秘めています。

年間配員計画ではなく、年間業務処理能力の計算が必要な未来

経理の方がいなくても、現場に行かなくても、会計システムから自由にデータを参照でき、証憑を確認できるとすると「いついつ行きますから会議室準備しておいてくださいね、経理の担当者も質問に答えられる体制をとってくださいね」と言ったことが必要なくなります。もちろん、直接会って話をしないといけないことも多々あると思いますが、これまでに比べて激減するはずです。Zoomなどで顔を見ながらビデオ会議を行うこともできます。

会計freeeでは質問も会計システム内でメールを送るようなイメージで確認できるようでした。期限を決める必要はあると思いますが、質問を投げておけば経理担当者が自分のタイミングで回答できます。

細切れの時間も利用できるようになり、移動にかかる時間が削減されることで、より柔軟にリソースを利用できるようになります。監査が必要なタイミングで必要な工数分の時間を確保できるかどうかは重要になりますが、何月何日に誰と誰がどこに行くといった年間で配員計画を立てる必要はなくなります。

会社との調整も「そんな時期のことはまだわからんよ」と思われかねない何か月も前に日程表を提示する必要もなくなります。「ちょっと2時間ほどZoomでお話伺っていいですか?」と1週間ぐらい前にアポイントを取れば十分で、クライアントも調整しやすくなると思います。

つまり、計画から監査実施までのリードタイムが大幅に短縮され、システム開発でいうウォーターフォール的な進め方からアジャイル的な進め方に変わってくるのではないかと思います。

未来の監査で生まれる新たな課題

このように、監査人が場所や時間の制約から今より大きく解放されると、新たな問題が生じます。例えば喫茶店でも監査可能な状況では、情報流出リスクが高まります。必要になってくるのは、どこなら監査をやってもいいのか、自宅でやるならきちんとセキュリティに問題が無いことを説明して承認をもらうなどの手続が必要になります。

また監査チームが同じ場所、同じ時間に監査を行わなくなるため、コミュニケーションがうまく取れなくなる可能性もあります。そのあたりも、「コミュニケーションが取れないからやっぱり現場で」みたいな形で従来の監査のやり方を変えられないハードルになりそうです。